◆【本編16話:そう……面倒くさいね】より
ヴェサリウスでそれぞれの機体に搭乗する際に、キラについて語るシーンから
「…昔…月の幼年学校で一緒に育った…幼馴染みなんだ…」
どうやら、彼はこの事を教えたかったらしい。何故かは知らないが。
(でもごめん、もうソレ知ってる。しかも発信源はキミの口からだよ。盗み聞いててごめんねアスラン!)その事実を聞かされた私は、思わず『知ってるよ?』という言葉が口から出そうになるのを必死で抑える。ここは知らない振りでポーカーフェイスを貫くしかない。本日のアスランとの会話はひたすら『耐える』コマンドを連打している気分だった。
私は整備のファイルをゼロのコックピットに放り出して、アスランを中に招き入れる。
あまり他に会話を聞かれたくないためだった。
「友達って事は、年、あんまりかわらないんだ? 仲良かったの?」
「……そう……だな…あの頃は…」
「……そう……面倒くさいね」
「面倒…?」
(え、何でそこで不思議な顔が返ってくんの)そこは不思議な顔をするシーンなのに、アスランときたら苦しそうに目をぎゅっとつぶって眉根を寄せる。逆に私のほうが不思議そうな顔をさせられてしまった。
「え…あの…アスラン?」
「キラは、いつだって面倒な事を俺に全部押しつけるんだ…! 夏休みの宿題だって、俺はあんなに毎日『ちゃんとやってるか?』って聞いたのに、結局は夏休みも後三日で終わり…って日まで溜め込んで俺に泣きついてくるし! それに…」
「ちょっ……ちょっとアスラ…」
私はアスランが急にヒートアップし始めて、若干引いた。というか、昔からやっぱり苦労人なんだ。
「そんな昔の事、今言わなくてもいいだろ! アスランのばか!!」
「キラ……!」
「だいたい夏休み終了三日前じゃないよ! 四日前だよ!」
(いや、論点ずれてるよキラ…というか、止めてよアスランを)
「四日前でも三日前でも俺に宿題手伝ってくれって泣きついてくるのは変わりないだろ!? だいたい、電子工学の自由課題が三日や四日で終わるわけないって知ってるのに持ってくるんだから、確信犯じゃないのかキラ!?」
「アスランだって僕の課題が終わらないの知ってて、実は僕の分の課題の準備しててくれるじゃないか! 結局は僕が大好きなくせに、今更何言ってんの!!」
「なっ!! ああ、そうだ! お前だって俺が大好きだから、いつもいつも泣きついてくるんだろ!? いい加減に素直になれキラ!」
「僕はいっつも素直だよ!! アスランなんか大好きだ!」
「キラ…っ!」
「アスラン…っ!」
そして撮影スタッフを押し退けてアスランに走り寄りジャンプして抱きつくキラと、それを両手を広げてキャッチするアスラン。
「……何、このバカップル……?」
CUT!
(ねぇ…このバカップル殺っちゃっていい?)
(俺も手伝おう。とりあえず狙撃するか、アーティ)
(…いいね、賛成)
(って、待て待て二人とも! 気持ちはわかるが、とりあえず落ち着けぇ!)