二章ノボル出逢い編
09話:餌付けは餌をやるものだったよね?
餌付けに成功した。
と、いうか、餌をやっていないんだが。
コレは餌付けか?

「……ジョー君のバカ、ジョー君なんて嫌いだ、ジョー君はズルい、ジョー君なんかレアチャルに噛まれちゃえ」
「すまない」

先ほどから俺の背中に張り付いて呪詛を並べ立てるノボルは。
俺の頭に乗ったレアチャルを羨ましそうに見ている。
そう、レアチャイルドドラゴンの餌付けを成功させたのは何故か俺だった。
因みに本当に誓って餌はやっていない。
突如俺の顔面に降って湧いたレアチャルは、気づいたら使い魔になっていたのだ。
メニュー画面にもきちんと出ている。
………どんなシステムエラーだろうか。

「俺のペットになる筈だったのに!一緒に寝たり、一緒にお風呂入ったり、一緒にご飯食べたり、一緒に食材集めしたりしようと思ってたのに!!!」
「すまない」

すねまくって、とうとう俺の腰にしがみついてゆざぶってきた。
そんなことをしてもレアチャルがノボルの使い魔にはならないぞ。
勿論言わないが。

「なんだったらジョーにやってもらえば?そうすれば漏れなくレアチャルもついてくる」

にやにや俺たちのやりとりを見ていたマーティが突然そんな事を言い出した。
待て、マーティ。
どこのキャッチセールスの謳い文句だそれは。
無駄なお得感がそれを増長させているぞ。
誰得って別に誰も得じゃない。

「それいいじゃん!」

そして引っかかるなノボル。
将来が心配だから。
通販で無駄遣いする光景が目に浮かんで遠い目になった俺を誰が諫められるか?
……出来まい。

「責任とって、ジョー君がやってよ!勿論レアチャルも一緒にだからな!」

責任ってなんのだ?
レアチャルを奪った責任?
それは俺の所為なのか?
疑問はつきないが、小生意気な王子様の前では百の疑問も意味がない。
勿論俺の返事は「Yes」だけだった。

「さて、ノボル君」
「なに、アルさん?」
「レアチャルは、まぁ、ね」

曖昧な笑みで、言葉尻を濁したアルさんだ。
まぁ、俺が使役化しちゃったし、ね。
そんなところだろう。

「とにかく、一度第一階層まで送るよ。お兄さんだっけ?きっと心配してるだろうしね」

そうだ、この迷子の少年を保護者らしい兄の元に送り届ける。
それでいい筈だったのだ。
というか送り届ければ、おさらば出来る。

「いらない」
「は!?」
「俺、ジョー君といる」

………嗚呼、神よ…!

「お兄さんに心配掛けちゃだめだよ」
「……ヒサ…」

ノボルは、視線を合わせてしゃがんだヒサさんを伺い見上げる。

「あのね、この世界はとても危険で、しかもゲームじゃない。HPなんて表示されているけれど、あれは俺たちの命なんだ」
「知ってる…」
「何千人も、ノボル君より大人の人間が死んでいるんだ」

その言葉に、冷たい空気が流れる。
SAOの、理不尽な現実だ。
ゲームの世界なのに。
プレイヤーがポリゴンの欠片と成り果てれば、現実世界の頭に取り付けられたナーヴギアから脳への高圧電流がながされて、死に至る。
約九ヶ月前に起こったGMからのチュートリアル。
ナーヴギアを現実世界の人間に無理矢理外されても同じことが起こる。
世界同時中継で流されたその情報を信じずに。
家族や周りに人間が無理矢理ナーヴギアを外し。
二百名以上がその所為で死んだという。

「そんな危険なこの世界で、君の無事が分からないなんて、君のお兄さんは心配で胸が潰れてしまうよ」

現実世界にいても、この世界にいても。
家族はきっと心配が尽きないだろう。
俺たちはそんな世界に「生きて」いるのだ。


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