★疑惑★

何事も無く兵学校での日が過ぎて行くように思えていた時、セシルに関する噂を耳にした。
いわく、セシルは王の稚児で、貴族でもないのに城に居を構えられるのは王の夜伽をしているからだという。
何をバカなことを、カインは呆れ顔をしていた。
少年の頃、セシルを野原で押し倒してキスをしてしまったことを思い出した。
セシルは何をしたの?とでも言いたげな無垢な顔をしていた。
あの愚鈍と言っても良いほどに世間知らずなセシルがそんな真似をできるわけもない。
カインにとって、セシルは世話をしてやらないと何もできない子弟だった。

しかし、カインがセシルの部屋を訪れた時、その考えは覆ってしまった。
セシルは少しぼうっとした顔をして、窓枠にひじをつき、読みかけの本を手繰っていた。
カインが扉を開けても、しばらくはそれに気が付かず、窓の外を眺めていた。
その時、カインはつぶさにセシルを観察した。
あの時から、随分と身長は伸び、長い手足を弄ぶかのように椅子から投げ出している。
少し伏せられた銀色の睫毛が頬に影を落としている。
兵学校ではきちんと隙間なく着込んでいるブラウスを、部屋の中では少し崩して着ている。
開けられたボタンから覗く白い首筋が扇情的だ。
彼から立ち上る物憂げな雰囲気。
彼は恋をしているのだろうかしら。
誰もがそう思うだろう。
カインは幼い子弟だと思っていたセシルの成長に驚いて言葉を失っていた。
セシルは顔を上げると、ようやくカインの到来に気が付いた。
そして、いつもの笑みを浮かべて、カインを迎え入れた。
少し陰鬱そうな趣はすぐに消え失せ、幼さを残す普段のセシルが戻ってきた。
カインは安堵して、笑みを返した。

セシルは何か影の様なものを持つようになった。
セシルは悩んでいた。
この時からだった。
陛下がセシルを寝室に招くようになったのは。
誕生日のお祝いをしてくれた陛下は、セシルに「成長した姿が見たい」と言って、服を脱がせた。
陛下の言うことだから、と従順なセシルはブラウスを脱ぐ。
薄暗い寝室の蝋燭の光に照らされたセシルの裸体は白く輝いていた。
それを見て、満足そうにうなずくと、陛下はセシルに手を伸ばした。
首筋から肩。鎖骨からわき腹へ。手を這わせる。
意図的に乳首を撫でられると、セシルの方は跳ねた。
手が臀部に移動する。
まろやかな尻を撫でられ、揉みこまれる。
そして、ゆっくりとその狭間に指を差し込まれると、セシルは緊張で脚を強張らせた。
陛下は満足そうに微笑むと、セシルをベッドに促した。

天蓋の着いたベッドに仰向けになり、陛下の挙動を恐々と見守っている。
陛下が口づけてくる。
チュッと音を立てて、一度はそのまま唇を離される。
―あぁ、この感触は―
セシルは幼いころ、カインに野原で剣術の稽古を付けてもらい、偶然倒れ込んでしまった時、カインがこのように口づけてきたことを思い出していた。
一瞬の優しい思い出。
しかし、陛下が顎に手をかけ、口を開かせて、舌を差し込んで来た時、思い出は消し飛んでしまった。
陛下の舌に自分の舌を絡め取られて、セシルは困惑のあまり、シーツを握りしめた。
辛そうに呼吸をする。
「はぁ・・・んっ・・ふっ、うぅ・・・」
セシルが身を捩るのを見て、陛下は下を抜き取った。
透明の糸が二人を結ぶ。
次に、陛下は唇を首筋に充てた。肌に吸いつきながら下へ移動する。
乳首を舌でなぞられると、セシルは短く悲鳴を上げた。
無礼だったと思って、すぐに口をふさぐと、震える体を叱咤して、陛下の愛撫に耐えた。
「んぅ・・・あ・・・はぁ・・・」
そこを舌でこねられ、吸い上げられると、腰が疼いた。
赤く色づき、形を変えていく。
もう片方も指でつままれ、左右に押し倒される。
「ふっ・・陛下ぁ・・・あぁ・・・」
セシルは恐々と陛下の名前を呼ぶ。目尻からは涙が零れる。
「セシル、泣かなくていいんだよ」
陛下が笑み浮かべてセシルの髪を撫でる。
しかし、その瞳は欲望にぎらついていて、更にセシルを怯えさせた。

陛下の手がセシル自身を掴んだ。
「あ、陛下、やめて・・・うあ・・・」
大きな手がそれを梳き上げる。
その手から逃れようと脚をばたつかせたが、何度も上下されるうちに、官能を呼び覚まされ、爪先を丸めて、快楽に悶える。
「あ、や、へいか・・あ・・・ッ・・・」
セシルが達する。
荒い息をつきながら、涙にぬれた瞳を伏せる姿に嗜虐心を煽られる。
陛下の手を汚してしまった。
塗るついた感触が陰茎を這いまわる。
イッたばかりのそこを梳かれ、セシルは腰を捩じった。

陛下はベッドサイドのチェストから、何かを取り出した。
「これは気持ちがよくなる薬だよ」
そう言って、小瓶を弄んでいる。
蓋を取ると、とろりとした液体を指に絡ませた。
セシルは倦怠感から、ベッドに沈みこむようにして、陛下を見上げた。
ピンク色の液が纏わりついた指を下肢に近づける。
―あぁ、また―
もう一度そこを掴まれるのだと思って、構えていたが、陛下はそこでなく、セシルの後孔の方へ触れてきた。
「何を・・・陛下・・・ッ・・・」
蕾を撫でられ、指を差し込まれる。
「う・・・あ・・・いや・・・」
ぬめりを帯びた指は簡単にセシルの中に埋まった。
中が指を食い絞るように蠢く。
「力を抜け」
セシルがたじろぐ姿を半ば楽しむようにして、陛下が言う。
セシルは一生懸命力を抜こうとしてシーツを掴む。
陛下が埋め込んで指を円を描くように動かす。
「うぅ・・・はぁ・・・」
苦しそうにセシルが呻く。
「はっ・・・ん・・・あぁ・・・」
中を撫でられていると、陛下の指先が熱くなってくるように感じられた。
「あ・・あん・・・はぁ・・・んぅ」
頬が上気してくる。セシル自身が再び立ち上がり出す。
「ふっ・・あ、あっ・・・あぁ・・・」
腰をもじもじさせ、指の動きを追う。
「効き始めたな・・・」
セシルの変化に陛下は満足して、もう一本指をくぐらせた。
「あぅ・・・」
質量が増し、セシルが呻く。しかし、蕾は喜ぶ様に綻び、ひくひくと指を迎え入れた。
中に入ってくる。
二本の指が完全に埋まると、今度は小刻みに素早く動かす。
「あ、やぁ・あ、はぁん」
襲ってきた快楽に悶える。
「うぅ、あ、あぁ・・あっ、あ、あぁ」
背が仰け反って行く。
「ふ、あ、もう、あぁッ・・・」
ビクッと震えてセシルが達する。
先程達した時よりも、すさまじい快楽に見舞われ、セシルは気絶したように倒れた。
陛下は指を抜き取り、初めての快楽に動揺している蕾を眺めた。
「まだ、無理だな」
そう言うと、前をくつろげ、それをセシルの前に差し出す。
セシルの脚を抱え上げ、それを挟みこむようにして、上下させた。
陛下が動く度に、セシルのそれと擦れ合う。
「あ、う、ふぅ、あ、あぁ、あ」
息も絶え絶えのセシルは陛下の動きに合わせて揺さぶられた。
そして、胸元に熱いものを浴びせかけられると、体を拭かれ、自室へ戻された。

セシルはその時からたびたび寝室へ招かれるようになった。
初めての時と同じように体を検分され、中に指を埋め込まれる。
その儀式めいた夜の時間がセシルは恐ろしかった。
昼間の陛下は幼いころと変わらず、優しいバロン王陛下だった。
しかし、夜になると別人のようになってしまった。
そのただ事ではない様子を、他人に口外することは憚られた。
何か恥ずかしいことをしているようで、目の前にいるカインに知られてしまったら、軽蔑されるのではないかと恐れた。
カインとはたわいのない話をして時を過ごす。
日が暮れると、カインは寄宿舎へと帰って行った。
また夜が来る
セシルは陰鬱そうな瞳を時計へ向けた。

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