★悪の華★

飛空挺の簡易ベッドの中で、カインはセシルの衣服を剥ぎ取っていた。
涙が薄い膜を張っているセシルの瞳。
動揺を押し殺すように、快楽に逃れようとしている。
逃してやるものか。
自分の持つ、本物の憎悪を刻みつけてやりたい。
全ての物事を許し、受け流すセシルの曖昧な頬笑みの砦を、カインは破壊してやりたいとかねてから思っていた。
「俺が殺した」
そう宣言した時のセシルの動揺した表情。
それを思い出すたびに、カインの中には歓びが沸き立ってきた。
いつもセシルが最も大事にしていたもの、カインを差し置いて常に優先してきたもの、それを壊したのは紛れもなく自分だと言うこと。
人を疑うことさえ知らないような、その純粋な瞳、世間を渡り歩いていくには愚鈍すぎると言って良いほどのお人よしな性格、その美徳を持つ彼に、カインはおぞましいほどの執着と憎悪を見せつけてやりたかった。

唯、ひたすらに、竜騎士としての技を磨こうと精進してきた少年時代。
成人する前から竜騎士団を取り仕切ることとなったカインは、団長として認められるために、あらゆる努力をした。
竜騎士団のためのトレーニングプログラムを自ら構成したり、任務遂行のための作戦を組み立てたり。
カインはこの日も、新たに編み出した作戦を陛下へお見せしようと、王の間へ向かっていた。
恐らく、陛下もこの作戦を気に入ってくれるだろう、カインは自信に満ち溢れていた。
王の間の扉が薄く開いている。
そこから中の灯りと陛下の話声が漏れてきた。
どうやら先客がいたようだ、邪魔になりはしないかと、カインは中の様子をうかがった。
そして、息を飲んだ。

「セシル、私の言うことが聞けないのか?」
王の間では、王がセシルを責め立てていた。
玉座に座らされたセシルは、一糸まとわない姿で、玉座の肘掛けに開かされた脚を固定され、王に全てをさらけ出す姿を取らされていた。
「・・・陛下、おやめ下さい・・・」
弱弱しい声で、セシルは陛下の手を止めようとしている。
震える肩。頬を伝わる涙。
セシルの制止を求める手を振り払い、陛下は酷薄な笑みを浮かべると、セシルの性器へ手を伸ばした。
ハッとセシルが息を飲む。
「あっ・・・いやです・・・」
セシルが身をよじって逃げようとするが、体は玉座に押し付けられており、逃れることは叶わない。
「ここはこんなに喜んでいるではないか」
陛下の大きな手がセシルの下肢を上下する。
唇をかみしめて快楽に耐えるセシル。
王の意地悪な手がセシルの後孔をくすぐる。
指を埋め込まれると、セシルのすすり泣きの混ざる嘆願の声が聞こえてきた。
「もう、お許しを・・・」
陛下はその声を全く無視して、手を小刻みに動かせた。
「あっ・・・あぁ、んっ・・・はぁ・・・」
セシルの頬には更に涙が流れる。
「あぁ、だめです・・・あ、あぁぁ!」
玉座にかけられた脚の爪先が丸まり、セシルは背を反らしながら達した。
王から顔を背けるように、セシルは荒い息を弾ませている。
目尻を桜色に染め、涙にぬれた瞳を伏せる様子に、王の欲望は燃え立った。
陛下はガウンの前をくつろげると、セシルに覆いかぶさった。
セシルは最後の抵抗を試みる、王の体を押し返そうと、手を突っぱねた。
しかし、王はそのセシルの両手をいとも簡単に片手で押えて、セシルの頭上に束ね上げた。
そして、自身をセシルの蕾に押し付けると、大胆に押し入った。
「うぅ・・・」
セシルの脚がその衝撃に震えている。
「セシル、観念しろ」
王が腰を振るう。
「いやっ・・・あぁ、あっ・・あぅ・・」
顔を横に振るセシル。王が腰を打ち付ける度に、セシルの体は揺さぶられ、涙が飛び散った。
王の間には陛下が腰をセシルの臀部にぶつける肉音が響き渡った。
ひと際深くセシルの中に突き入れると、王は達した。
「あ・・・」
中に注がれる濁流に、セシルの白い腿は痙攣する。
陛下がセシルの中から自身を引き抜くと、白濁が糸を引いた。
中からこぼれ出す液が玉座を汚す。
ぐったりと背もたれに体を預けるセシル。
王は息を整えると
「さぁ、セシル、もう一度だ」
そう言って、再び膨れ上がった自身を、ひくつく蕾に擦り付けた。

カインは持っていた作戦書を手の中で握りつぶした。
ずっと尊敬していた王。亡き両親の代わりに自分を育ててくれた王。
その王が、セシルにこんな狼藉を働いている。
こんなことをされて尚、セシルは王に忠誠を誓っていた。
自分とは違い、バロンの貴族社会に属していないセシル。
後ろ盾となっているのは王だけだ。
王の援助を失えば、セシルは路頭に迷うことになる。
王はその権限を使って、セシルを服従させている。
あの美しいセシルを、あんなに純粋な目で王を見つめているセシルを、王は踏みにじった!

もう国のために剣は取るまい。
いつか必ず、この手で、王を殺してやる!
カインは今すぐに王の間に飛び込み、王を殺してやろうと意気込んだ。
しかし、謁見のために着替えてしまったカインは丸腰だった。
今の自分では何もできまい。
それに、戦っても少年の自分は王に負け、捕えられ、牢に入れられた後、殺されるだけだ。
王を超える力を身に付けた時、殺しに行こう。
カインは誓いを立てた。

その日からカインは全ての任務を、まるで王を殺すかのような覚悟で臨んだ。
目の前の敵に負けてしまうようでは、王を殺すことはできない。
実力を付け、誰もが認める竜騎士団長になる、この手に余る様な敵が目の前からいなくなった時、王の前に赴こう。
その時から、カインは願かけのために髪を切っていない。
短く切りそろえていた髪が、腰元まで伸びた頃、カインは使いこまれてはいるが、手入れの行きとどいた槍を左手に持ち、王の間へ進んだ。

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愛した故に芽生えた悪の花

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