★オペレーション・スピットブレイク★

赤い翼がバロンへ帰還すると、すぐに兵団は会議室に集められた。
セシルが経緯を説明する。
いつものセシルらしからぬ態度。何ら感情を表に出さず、淡々と作戦を陳述していく。

ミシディアは秘密裏に死者蘇生実験を行っていた。
しかし、その実験は失敗し、死者は不完全に蘇り、試練の山にはアンデッドが溢れだした。
本日赤い翼はその状況を確認。試練の山には数万のアンデッドが徘徊している。
バロン軍は全兵力を持ってこれを討伐する。
バロン王はこの実験が行われていたことを掴んでいたため、これ以上アンデッドを増やさないためにも、ミシディアからクリスタルを保護する作戦に乗り出した。
ということをセシルは説明した。

会議室はどよめく。
王の不審な行動に疑問を持っていた兵士たちは、この説明に納得した。
秘密裏に赤い翼の飛空挺が飛び立ったのも、バロン市民を動揺させないための配慮だったと解釈され、王は信用を取り戻した。
議題は、アンデッド討伐のための隊列に移った。
司令官のセシルが、どのように征伐するか、案を出している。
カインはその様子を、腕を組み、渋面を作りながら聞いていた。
大した時間もかからず、会議は終了し、兵団は試練の山へ向かう準備を整える。

飛空挺に乗り込もうと足早に移動を始めるセシルを、カインは呼びとめた。
「セシル!」
セシルは立ち止り、幽霊のように血の気の無い顔をカインの方へ向けた。
その生気の無さにカインは驚く。
「カイン、どうした?」
義務的な口調で問う。
「先ほどの説明、あれは本当なのか?何か、隠しているだろう」
カインは努めて厳しい表情を作り、セシルに詰め寄るように言った。
「試練の山へ向かえば分かることだ。カイン、早く支度をしろ」
セシルはカインの腕を振り払うようにして立ち去った。
人が変ってしまったかのような態度に、カインは怪訝な顔をしつつ、竜騎士団の寄り合い所へ向かった。


赤い翼と竜騎士団が、試練の山へ到着する。
カインは、セシルが説明した通り、アンデッドの群れを確認した。
土の中から次々と湧き出てくる。
セシルは飛空挺の大砲を向けると、山へ向かって次々に撃ち込んだ。アンデッドの群れを一掃する。
数が減ったところで、山へ上陸し、残党を狩り始める。

カインとセシルは試練の山へ登り、亡者たちを倒して行く。
アンデッドはうめき声を上げながら攻撃してくる。
なぜ、ミシディアのように呪術を重んじる民族が、死者の眠りを妨げるような真似をしたのか。
おぞましい亡者の群れを次々に倒しながら、カインは考えていた。
すると、古代の甲冑を身にまとった亡者は、
「バロン王、なぜ、我らを蘇らせた。許さぬ!許さぬ!」
と憎々しげに叫び声をあげていることに気がついた。
前大戦での戦死者がまつられている試練の山。バロン王もこの参戦していたはず。
この亡者たちは、バロン王の戦友ではないのか。
亡者の攻撃を防ぎながら、あなた方を蘇らせたのは本当にバロン王か。と問うたが、亡者たちが、カインの問いに応えることはなかった。
やはり、蘇生実験をしていたのは王陛下の方だった!カインは確信した。

セシルの方をチラリと見る。
機械的にアンデッドを土に還し続けるセシル。陛下はきっとセシルのことを操っているに違いない。
死者を蘇生できる魔力があるのなら、セシル一人を操るくらいなんでもないはずだ。
しかし、あの意志の強いセシルが操られるとは。
なんとか、セシルの目を覚まさせて、バロン王を止めなければならない。
カインは決意した。

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