★愛よ、汝は来た…!私を砕きに★

私は毎日、セシリアとクルーヤの幻影におびえて暮らしていた。
しかし、突然、その幻影はなりを潜めた。魔道士も城へ姿を見せることはなくなった。
私はようやく訪れた幸福にほっと胸をなでおろした。
1週間たっても、あの幻影は現れない。
私は久しぶりの安眠と、食事とを楽しむことができた。

そして、セシルが軍務から帰ってくると、早速自室に招いた。
あのわけのわからない魔道士の戯言から解放されたかった。
本物のセシルを見れば、あの魔道士がただの食わせ物なことは一目瞭然となるだろう。

セシルを部屋へ招き入れると、私はセシルに抱きついた。
私のセシル!
セシルは突然の抱擁に驚きながらも、抱き返してくれた。
私の方が、あやされている子供のような気分だ。
優しく口づけると、セシルもいつも通り、応じてくれた。
やはり、これは私のセシルだ。クルーヤの幻影はもう来ない!

ベッドの上で、セシルは裸になった。
私の肌は乾き、骨が浮き出て、まるで病人のようだった。
セシルは私自身を口に含み、奉仕をしている。
その舌使いに私の自身は徐々に元気を取り戻し、堅く張り詰めてきた。
ふふっと嬉しそうに微笑むセシル。
そして、私の上にセシルがまたがる。私自身を手で支え、セシルが蕾を見せつけるように挿入する。
なめらかな肉に包まれ、私は再び快楽の虜となった。

ところが、私の目の前は急に真っ暗になった。
目を左右に動かす。しかし、何も見えない。
―お前が、最も手に入れたがっていた人間。そいつに会わせてやろう―
頭の中で声が響く。また、あの魔道士だ!
木霊が不愉快な跡を帯びた。
すると、私の目に一筋の光が差してくる。

青いベールをかぶった女性。大理石の彫刻のように生気の無い真っ白な肌をしている。
暗闇の中に、その白は存在感を示し、肌の周辺は白い光線の靄となって輝いていた。
瞼はぴったりと閉じられ、銀色の長い睫毛が頬に影を落としている。
セシリア。
私は震えた。セシリアの頬が引きつるようにピクリと動く。
まるで、墓の中の死体が蘇生した時のように、不自然な痙攣が走った。
瞼が持ち上げられる。
私は恐ろしかった。その瞳に見つめられるのが怖かった。
どのような軽蔑を持って、私をその瞳で認識するのか。

すると、私の目の前は急に激しい光に包まれた。
チカチカと目に残像が残るようなフラッシュ。
私はパニック寸前だった。
ところが、どうしたことか、私は下半身がぬめった柔らかな肉に包まれ、こねられているのを感じた。
自身に血が集中する。紛れもない快楽だ。
私は目を凝らした。
すると、私の目の前、私の腹の上で、全裸のセシリアが飛び跳ねていた。
豊満な胸を揺らして、その性器で私を飲み込み、自ら上下に動き、恍惚の表情を浮かべていた。
乳首がピンと立って、上向いている。
セシリアは私を許したのだろうか。そうに違いない。でなければ、こんな淫らな性交はできない。
私はたまらず、セシリアの乳首に触れようとした。
手を伸ばし、あともう少し、というところで、また暗闇に包まれた。

セシリアはまた、青いベールをかぶり、目を閉じている。
先ほどの快楽はどこかへ消え失せた。
今度は、パチッと音がしそうなほど、勢いよく目を開いた。
私を見つめる。
私はストップをかけられたように身動きが取れなくなってしまった。

セシリアの瞳がまっすぐこちらを見つめる。
私の口の中は緊張でカラカラに乾き、唇が痙攣し始めた。
闇の中に浮かび上がるセシリア。その銀髪は自ら光を放っているかのように輝いていた。
セシリアは動かない。

私は体全てをセシリアの足元に投げだし、両手を地に付けてすり寄った。
セシリアが私を見降ろしている。
これは私に与えられた最後のチャンスだ。
悔い改めることを、全身全霊で誓えば、セシリアと和解することができるはずだ。
聖母セシリア!私を許し賜る救いの女神よ!

指先が震える。
背筋が凍りそうなほど悪寒がする。肺が発作を起こしたかのように引きつる。
私はのどから、醜い音を立てながら呼吸する。
恐る恐る顔を上げた。

そして、私は凍りついた。
セシリアの目には侮蔑しかなかったのだ。
憎悪と不快に口をゆがませながら一言だけ言葉を発した。
「汚らわしい」

私の肺は機能することをやめた。
「うわああああああああああぁぁあ!!」
セシリア!セシリア!
そんな目で見ないでくれ!
恐怖の発作で、めちゃくちゃに頭を掻きむしった。
セシリアの存在を間近に感じると、わけがわからなくなり、自分の目をつぶした。
そして、私の魂は地獄へと連れてゆかれ、この世に戻ることはなかった。


セシルは、依然としてバロン王の上で腰を振っていた。
しかし、突然王が、叫びだし、髪の毛をむしり、自分の目を引っ掻きだした。
動きが止まったかと思うと、真っ赤に裂けた目を見開きながら絶命したのだった。
セシルは気味の悪い笑いを浮かべると、醜い人形に変化し、その場に倒れた。
セシルの正体はゴルベーザが操る人形だったのだ。


本物のセシルは陸兵隊の軍務の途上だ。セシルは王が殺されたことを知らない。

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