★暗黒騎士★

私の前にまたあの魔道士が現れた。
私は身構える。
魔道士はこのように切り出した。

「先日、お会いした時に、閣下は、私の出身をお尋ねになられました。私の生い立ちはきっと閣下の御関心を引くことになるでしょう」
表情の全く読み取れない甲冑の男は告げた。

「クルーヤの息子は一人ではなかったのです」
魔道士は恐ろしいことを言った。それは私とクルーヤの関係を持ち出すだけではなく、セシルの存在をも知っていると明言しているようなものだった。
「まさに私がもう一人の息子ですよ。この前参上した時、父の幻影をご覧に入れましたが、閣下は驚かれていましたね」
私は緊張のあまり、口の中が渇いてきた。

「あなたが父、クルーヤを憎んでいることは知っています」
ふふっと笑う。
こやつは何を考えているのだろうか。

「クルーヤは聖なる光を操ります。そして、他人にそれを託すこともできる。あなたが殺した、リチャード・ハイウィンドが継承したように」
私ははじかれたように顔を上げた。
なぜそれを知っている!

「聖なる光に対抗できる力、それはつまり、闇の力、悪魔の力ではありませんか」
魔道士は甲冑の周りに紫色の瘴気を漂わせた。身の毛がよだつ。
「あなたは、セシルを飼殺しにしたいと願っていますね。クルーヤの力を断絶させるために」
魔道士が一歩近づいてくる。

「クルーヤの力からセシルを遠ざけるためには、彼を暗黒騎士にしてしまえばいい。そうすれば、聖なる光から最も遠い存在となり、暗黒に蝕まれ、あなたがクルーヤに与えたかった苦しみを味わった後、地獄へ落とすことができます」

セシルを暗黒騎士にだと!冗談じゃない!
「帰れ!」
私は怒鳴りつけると、その魔道士はすっと消え失せた。
手の震えが止まらない。


軍務から帰ってきたセシルを呼びつけると、私の部屋へ招いた。

美しいセシル。私はお前の親族かもしれない男からおぞましいことを提案されている。
お前を暗黒騎士にすると言うのだ。

私は心の中で呟いた。
絶対に許すものか!

セシルは久しぶりに私に会えたことがうれしいのか、にこにこと微笑んでいる。
セシルの行く末は近衛兵隊長だ。生まれた時から決まっていることだ。
しかし、暗黒の杭を打ち込まれたセシルは一体どのような顔をするのだろうか。
セシルの生を、瘴気が駆け巡り、バラの様な頬を、死人のそれに変えてしまうのだろうか。
セシリアの頬。大理石の彫刻の様な、冷たい頬。
もし、セシルの生の源を悪魔の力で浸したら、その容貌は、ますますセシリアに近くなるのではないか。

私は暗い快楽を見出した。
苦痛で歪むセシルの顔。
クルーヤ、そこで見ているがいい。
お前は息子に聖なる光を継承させようとしているだろうが、それを私は全身全霊で拒んで見せる!
悪の光がお前の息子を包み、その体を蝕み、永久の闇の中へ沈めてやる!
それが私の復讐だ!

私はセシルの服を脱がせた。
この真っ白な美しい体は、あの禍々しい魔道士によって、ズタズタにされるのだ。
前戯もそこそこに、早急に挿入すると、痛みのせいで、セシルは顔を歪めた。
健気に耐えようとする顔を、更に歪めたくて、私は腰を打ち付けた。
「ああっ、陛下、お待ちくださっ、ああ」
かまわず、責め続ける。セシルの後孔からは血が流れた。
こんな苦痛など、これから起こる苦痛とは比べ物にならない!

ぐちゅぐちゅと聞くに堪えない音を響かせながら、セシルの中をかき混ぜる。
「あっ、あっ」
何度も往復しているうちに、セシルの顔が恍惚に変わってきた。
頬はばら色に上気し、目じりが赤く色づいている。
可愛いセシル。私のセシル。

私がセシルの中に欲望を吐き出すと、セシルも同時に達した。
セシルの上に倒れ込み、息をはずませる。
そっと接吻をした。死の接吻。
目に涙を浮かべながら、セシルは応えている。
唇を離すと、とろけるような笑みで見つめてきた。

そして、私は我に返った。
私は何をしているのだ。セシルの生命はもう既に、この手に掌握済みだ。
これ以上惨いことをする必要はないのだ。
この美しい体に孔を開けるだと?私はどうかしている。
私はセシルの髪を撫でてやった。セシルは気持ちよさそうに目を細める。

セシル。我が命。
お前の未来は、近衛兵だ。私の側近。私の下僕。
地獄の炎に焼かれることよりも、柔らかなベッドの上で往生することで報いるのだ。
私のセシル。

[ 15/66 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -