あなたは4時間以内に8RTされたら、家庭教師と生徒の設定で両片想いでじれったい茅乃と暁臣の、漫画または小説を書きます。 http://shindanmaker.com/293935
えーと、なんだ、関係性としてあんまかわらんような……
*パラレルです
*年齢差や性格設定などは変わりません
*企画倒れ
*真っ白な気持ちでどうぞ(無理か)
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夏の熱気も蝉の賑やかさも届かない贅沢な場所で、彼と私は逢瀬を続ける。
なんてね。
「……うん、全問正解ね。この調子なら大丈夫」
「そうでしょうか? 現代文はやっぱり意図がずれるというか……答えにしっかりと自信が持てなくて」
正解の丸しかついていない問題用紙を前に、殊勝にもそう漏らす少年に、私は心配ないわよと軽く肩を叩いた。
礼儀正しいのはいいのだけれど、無駄に力が入りすぎているような気がするのよね。
それに自分でも気づいたのか、はにかんだ笑みを見せる。
「勧められたように本をいろいろと読むようにしているんですが」
「感じ方は人それぞれでいいと思うんだけど、学問となるとそうもいかないのが矛盾しているわよねぇ。でも、暁臣くんは言葉使いもきれいだから日本語の扱いに慣れたら応用も訊くでしょ」
夏休みが始まってすぐに、この大学付属の図書館で知り合った彼は、現在高校二年生。
幼いころから最近まで、日本と海外を行ったり来たりして生活していたという。金茶の髪と灰色の瞳に、異国の血を引いていると明らかにわかる容姿はとても端整で、目の保養をさせてもらっている。
まったくもって美少年は世界の財産よね! ちょうど青年期に入りかけの危うさがまたよいわー。眼福眼福。このまま歪まずに美青年、美中年になっていただきたいものだ。
「茅乃さん?」
「はいはいなあに?」
よこしまなことを考えていたなどど彼に気づかせないよう、にっこり笑って、彼が差し出した問題集に赤を入れる。
素直な彼は勉強熱心で、こちらも教え甲斐がある。
しょせん真似事だけれど、臨時家庭教師としてはとても良い生徒だ。
いきなり「勉強を教えてくれませんか」なんて話しかけられたときは、何事かと思ったけれど。
後で聞いたところによると、以前から図書館でありとあらゆる書物を読みまくっていた私を見ていたらしい。
洋書も読み古典も手にしているから、私が言語関係に優れていると判断して、声をかけたと。
日本語での要領を得た質問ができないから、英語で訊ねてわかってくれる相手を探していたんだって。なかなか目の付け所がいい。私は英米文学科専攻で教免取得を視野に入れているから。
週に二日三時間ほど、都合を合わせてのことだからそう大変でもないし、教師志望の私のいい予行練習にもなっている。
といっても、こちらが英語を使う必要がないくらい、できているのよね。
さっき彼も言ったとおり、自分の答えに自信が持てなかったから、それを後押ししてくれる第三者が必要だったんだろうな。
なんといっても目の保養。癒しだわー。
臨時家庭教師が終わると、図書館を後にして、駅までの道を日陰を選び行く。
私より少しだけ背の高い彼にも日傘を差し掛けながらなので、歩みは鈍い。
「――ありがとうございます。茅乃さんのおかげで、休み明けにも何とか授業についていけそうです」
「お役に立てたならよかったわ」
なんというか、暁臣くんってイマドキの高校生らしくないというか、育ちがいいのか何かと丁寧で、そんなに気を使って生きていて疲れないかなーって思う。
そんなに大した距離でもないのに、いつも駅まで送ってくださるのだ、この少年は。
今も、私が借りたハードカバー三冊が入った袋を持ってくれて、車道側を譲らない。
紳士の国の生まれでもないのに紳士だ。
「あの、それで、お礼に食事でも」
「んー? 気を遣わなくていいわよぅ、暁臣くんは後輩になるんだし」
年下に奢らせるとか、この上さらに気遣いを受け取るわけにもいかず、サクッと断ると、目に見えてしょんぼりするのでなぜか罪悪感。伏せた耳と垂れた尻尾が見えるのは気のせいかしら。
「えー、ええとー、うん、それじゃあ、代わりに今度フランス語でも簡単に教えてもらおうかしら。もう片方の母国語なんでしょう?」
苦肉の策で、そう提案してみると。
……うおぅ……。
輝くばかりの笑顔が返ってきたよ……!
この子やばいな、この調子で他人になついていたら、そのうちかどわかされるわよ。しっかり言い聞かせておかなきゃ。
上機嫌を隠さない少年は、そのまま口を開いた。
「Tu as une grande place dans mon coeur.」
「え、なに、さっそく? ちょっと無理よ、簡単なのからにしてよ」
「Bonjour.」
「お、そうそう。やっぱり本場の発音は違うわねー。Bonjour ! 」
「Comment allez-vous ? 」
「Je vais bien, s'i……シルヴプレ? だっけ?」
「Je vais bien, s'il vous plaît.」
「s'il vous plaît. 舌もつれそう……」
口真似しているだけでも、英語の発音とは違うところが動かされているのがわかる。
英仏日と三ヵ国語ができる暁臣くんは頭の切り替えをどうしてるんだろう。
「……Je t'aime.」
「わあー。暁臣くんに言われたら照れちゃうわね!」
雰囲気たっぷりの声なので、破壊力がすごい。
パタパタと熱くなった頬を手のひらで扇いでいると、何やらため息。
「Je veux embrasser.」
「ん? なあに?」
知らない響きに問い直すと、にこりと笑みが返される。
「Oui ? 」
「ウィ?」
はい? なにが? と訝る間もなく。
ほんの少し屈んだ彼の顔が近づいて、ポカンとしていた口に何かが触れた。
一舐めして離れたそれが何だったかなど理解したくない私の耳に、駅前にいた人々の黄色い悲鳴と、少年の少年らしくない色気たっぷりのフランス語が入ってくる。
「C’était délicieux.」
夏の暑さだけじゃない熱に、襲われた。
Fin?
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まったく「両片想いでじれじれ」じゃない件。
結局どこまでもにぶい茅乃に実力行使するしかない暁臣という構図が出来上がります。
どっとはらい。
2013/07/26
追記:フランス語は検索して出てきたオーソドックスな口説き文句と挨拶です。
順番に、
(私の心はあなたでいっぱいです)
(こんにちは)
(ご機嫌いかが)
(良いです、ありがとう)
(愛してます)
(あなたにキスしたい)
(はい)←誘導
(ごちそうさま)※意訳
暁臣ェ……
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