ホント言うと、みんなが薦める可愛いドレスだって着てみたい。
一生に一度なんだし、結婚式は花嫁が主役なんだし、その日くらい許されるかなって、思ったりする。
でもさ、でもさ!
似合わないもの無理に着るとか、犯罪だと思うんだよ……!
あたしの訴えにフミタカさんはウムと頷いたあと、イヤミなくらい満面の笑みを浮かべた。
「まず、似合わないって思っているのは、お前だけだと理解するところから始めようか」
「ええー……」
ここでも出るのか身内の欲目。
「着物は抵抗ないくせに、おかしなやつだな」
「着物は日本人に似合うようにできてるからあたしでも大丈夫なんだよ!」
ものすごい偏見を叫ぶあたしをフミタカさんは生暖かい目で見つめて首を振った。
くっ、なんだその聞き分けのない子どもを見る目は!
「まあ、最終衣装確認のときにイヤってほど言い聞かせればいいか……」
などと恐ろしいことを呟いて、フミタカさんはヒョイとあたしを抱え上げる。
なんだなんだ――と訊ねるまでもなく、寝室に運ばれ、到着したのはベッドの上。
「あの、副社長?」
「なんですか木内秘書」「打ち合わせから、どうして押し倒されているんでしょう、わたくし」
いや、どうしてもナニもわかってるんだけど脈絡無さすぎなんだよ。
「とりあえず話はまとまったので、いろいろ充電させてもらおうかと」
「いやいやいや――疲れていらっしゃるようですし、とっととお休みになりやがったほうがよろしいですよ?」
シャツの裾を捲り上げようとする腕をバシバシ叩きながら、苦情を申し立てるが、全く意に解さず、フミタカさんはあたしの上に乗っかった。
「疲れてると小さい生き物を構いたくなるんだ」
「構うな寝ろムニムニすんなっ」
「んー」
拳骨で頭を叩いても猫パンチくらいにしか思われていない。
体格差は如何ともし難く、さんざん構われたのちホールドされて、あたしは疲労困憊で眠りにつく。まあ、一緒に暮らすようになってから、よくある光景だ。
……ちょっと今から新婚生活が不安なんですよ。
あたしの返事も聞かない段階で半年で式を挙げると決め、その通りに事を進めたフミタカさん。
今思うに、あまり時間を置くと、お互いの不安が大きくなって、駄目になっちゃうんじゃないかと懸念していたのだろう。
状況についていくのに精いっぱい、慣れたと思ったら準備で頭がいっぱい、ハッと気づけば式はもうすぐそこ。
恋人同士をすっ飛ばして婚約者になって、婚約者の立場に慣れたかと思ったらもう花嫁。
七年遠回りしたとは思えないスピードだよ。
……七年遠回りをしたからこそ、なのかな。
お互いが隣にいる、いつも触れられる距離にいる、それが当たり前になって。
結婚して、あたしが彼のお嫁さんに、彼があたしの旦那さんになるってこと、実を言うとまだ実感できていなかったりするんだけど。
だけど、もう彼以外のひとと一緒にいる自分は考えられないから。
二人で幸せになるために、進んでいきたいって思うんだ――