教会式にするか神前式にするか。
いったんは教会式でと決まったそれに渋面を見せたのは、フミタカさんだった。
どうもしっくりこない、と言う彼が参考資料や経験談を調べまくって出した結論は、「信じてもいない神に誓うのが空々しい」というもの。
まあ確かに、式の前だけキリスト教徒のふりして「誓います」なんて言っても真実味がないよねえ。
そうして最後までもめた式の形式は、フミタカさんと長々話し合って結局この形に落ち着いた。
オルガンの音をバックに、父に手を引かれて祭壇に立つ彼のもとへ向かう。
バージンロードを歩く私は引き振袖に洋髪、マリアベールといった和洋折衷で、古風な方がご覧になられたら眉をひそめられてしまうかも。
だけどリハーサルを見た二人の母も妹も、素敵だと太鼓判を押してくれたので気にしない。
堂々と、歩く。
ほんとうはつつましやかに目を伏せるのが花嫁の姿としてふさわしいのだろうけれど、だって、そこはほら、あたしだ。
こちらを向いて、あたしを待つフミタカさんの姿に、どうしようもなく嬉しくなるから。
満面の笑みを見せてやった。
――返ってきたバニラアイスメープルシロップチョコレート添え並みの笑みに失敗したと思ったけどね!
「二人とも、幸せになりなさい」
と、彼の手にあたしの手を渡す瞬間ささやかれた父の言葉に、思わず涙腺が緩む。
ぎゅっと手をつなぎ直して、顔を見合わせ、あたしたちは祭壇に背を向ける。
あたしたちを祝ってくれるために集まってくれたみんなに、向き直る。
「――本日、私たちは 皆様の前で結婚の宣言をいたします。
出会ったその日から今日まで育んできた愛情をさらに高め、永遠に変わることなく、
思いやりの心を忘れずに、病めるときも健やかなるときも幸せなときも困難なときも、
心をひとつにして乗り越え、楽しく明るい家庭を築いていくことを、皆様の前で誓います。
来生史鷹、――鈴鹿。」
幸せを誓う、あなたとみんなに。