甘えた、快楽に濡れた声が、自分のものだとは信じがたい。
 どうしよう。
 椿相手だと、抑制が効かない。
 溺れる。
「あッ、はぁ、あん、ぁあ、んっ……んん」
 途中でハッと気付いて、両手で口を塞いだ。
 こんな、声出してたら隣近所に聞こえちゃう……!
 ――今さらかもだけど。
 なんで我慢するの、と言うように眉をひそめた椿が、深く奥まで届く。
 背がしなる。
「ぁ、んぅ……ッは、ふぅ……っ、」
「……っん、伊万里、締めすぎ――……」
 だめだ、と呻いた椿が、こっちまでゾクゾクするような吐息を吐き出して。
 あの、何と申しますか。
 ……エロイ。
 きゅん、とお腹が疼いた。
 潤んだ目に写る、苦しそうな顔をした椿に、好き、と呟いた。
「っもう……! ごめん、先に……っ」
 え、なに? と思う間もなく抽出が激しくなる。
 声を押し殺す余裕なんてないくらい、強く、内側を侵略される。
「あ、ぁああ……んっ、やぁ、ああ、あっ、はあっ、ぁん」
 両胸を手のひらで押し潰すように捏ねられる。揺さぶられながら。
 揉みくちゃにされているのに、その激しさが、同時に、彼に求められている証拠のようで、歓喜を覚えた。
 欲しがって。
 もっと。
 全部、あげるから――……
「ぅ、くぅ……」
「は……っ」
 ごめん、と謝って椿が私の中から出ていって。
 温かいものがお腹に吐き出された。


「うう、ばかばか椿のマナー違反野郎っ」
 とぷりとお湯につかりながら疲労した身体を背後の馬鹿に預ける。毒づくのは忘れない。
 だって。
 着けないでしてたんだよっ!?
(いや気付かなかった私にも責はありますが)
 か、身体に、アレをかけられるなんて恥ずかしいことされたのも初めてだよ!
 へんたいへんたいばかー!!
 へえ〜、初めてか〜、って嬉しそうにしてるんじゃないよッ!
 ドン引きだよっ!?
 椿曰く勢い余って、の一回目が終わってすぐに、する前のお言葉通りにバスルームに連れ込まれてグッタリぼんやりしてるうちに、身体を綺麗にされて(アレコレもされて)、風呂につかってるわけですが。
「伊万里があんまり可愛すぎるからさー。気持ちいいしー」
 責任転嫁するなあぁッ!
「大丈夫、次は気をつけるから。鞄の中に入れてあるし」
 ………次は、ってまさかもう今日は無しだよね? 明日仕事だからね? なんで鞄の中にソレが常備されてんの、なんてツッコミは入れないから、おとなしく寝ようよ、ね?
 さわさわ蠢く、後ろから回された手を押さえる。
「伊万里、イってないでしょ。満足するまで頑張るから」
 頑張らなくていい頑張らなくて!!
「そうだ、伊万里。これ」
 身を乗り出した椿が、いつの間に置いたのか洗面台に置いたミニブーケを手に取る。
 うちの店で買ったやつ。
 はい、と渡されて。
「いつも伊万里に、と思って買ってたんだけどね。やっと渡せた」
 一仕事終えた、みたいな清々しい顔。

 “好きです、俺の彼女になって。”

 耳元で囁かれた、今さらな告白に笑う。
 お湯を溢れさせながら、向き直って了解のキスをした。


 END.
お疲れ様でした、バカップルにお付き合いありがとうございました……。
やはり椿も深月の森の住人でしたね!
暴走しすぎー!
上司か、上司が悪いのかっ。
草食系男子と見せかけて、とんだエロ野郎だった椿に呆れないで頂けたらと思います……。
伊万里はうちの娘にしてみれば積極的なのですが、相手がアレだったので引き気味です。
もちろんお風呂を出たあとも満足するまで(誰が)致されました。

合掌。

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