ワンルーム。綾がここで休むときはロフトを利用している。
 しかしそこで花と抱き合うには不向きで――
 ベッドじゃなくてすみません、と状況にそぐわない冷静な声音で詫びた綾は、一応の気遣いなのか、クッションを背中に宛がった。
 床と花の身体の間に自分の腕を差し込んで、ぶつけたりしないように守ってくれる。
 戯れ言ばかり口にしているようでいて、綾の花への触れ方はいつも優しくて穏やかだ。
 七歳差の余裕なのか。
 熱は感じるけれど、押し付けるものではなくて、緩やかに保たれて、安心できた。
 内側に入ってきたときも、辛さは少なく、驚くくらい馴染んだのだ。
 大きさ、とかでいうなら、モト彼より……なのに。
 いささか前の彼氏に失礼なことを考えていると、上の空になっていたのがわかったのか、不思議そうに顔を覗き込まれる。
「……何だか花さん余裕ですね? ちょっとキツくしても平気ですか」
 言い終わるのが早いか、彼は花の頭を庇っていた腕を彼女の腰に回した。
 腰を持ち上げられ、角度を変えて深く繋がる。
 下半身が宙に浮く格好になったまま、揺らされて、堪らず花は声を上げた。
「んっ、あっ……ん! はあ、あんっ、ああっ」
「そんなに声を大きくすると、お隣にも聞こえちゃいますよ?」
 誰のせいで声を上げてる!
 と、言えないツッコミばかりが溜まっていく。
 潤む目で唇を噛み、全く乱れた様子のない男を睨む。
 そんな花を見て、綾はクスリと笑った。
「可愛い」
「あ、あ……やぁっ」
 空を蹴る花の脚を捕らえて、綾はその柔い肌を舐める。
 痕がつくまで吸い、歯を立てて。唇が届く範囲、繰り返す。
 やだ、と花が泣いてもお構いなしだ。
「花さんのミニスカートは眼福ですが、他の野郎にも見られると思ったら腹立たしいんですよ……」
 これでしばらくは、脚を出せないですね、と満足そうに微笑んで。
 足首近くまで噛み痕をつけられた花は、バカヘンタイ、と弱く罵ることしかできなかった。
 しっとりと汗が浮き、冷えた肌の上を熱い舌が這う。
 傾いた太陽を意識しながら、花は朦朧とした視界の中、綾の姿を探した。
 隆起する膨らみに顔を埋めているのが見えた。
「……ん…やっ……」
 チュッと音を立てて胸の頂を含まれる。
 ずっと昂らせ続けられた身体は、その軽い刺激にも反応して、激しく跳ねた。
 綾の抱き方は決して激しいものではなかったが、その分とても長かった。
 同い年の、言ってみればがっついた男の子しか知らなかった花は、綾相手の緩やかに長く続く絶頂に疲れ果て、くったりと四肢を投げ出していた。
 二年ぶりの行為がこれって濃すぎる……。
 ヘンタイエロ奇人変人を舐めていた、
 と花は後悔しきりだ。
 未だ肌を弄ぶ男は、彼女と同じように額を汗に湿らせているものの、まだまだ余裕がありそうだった。
 失敗したなぁ、と今更ながらに思う。
 期間限定の関係なのに。
 お別れが近くなってから、こんなことするなんて。
 いや、お別れが近いから、しちゃったとも言うけれど。
 ちょっと、しばらくは、引きずるかも。
 そんな風に花が感傷に浸っていると、悪戯するのをやめて、綾が顔を覗き込んできた。
 半分眠りの世界に足を突っ込んでいる花に微笑んで、抱き起こして膝の上に乗せる。
 なに、と問い返すより先に、温んだ足の間にまた綾が入ってくる。
 予想していなかったそれに、花は背を反らして静止の声を上げた。
 が、綾が聞くはずもなく。
「花さん……昔みたいに読んでみて」
「え、あっ……、りょ、りょうちゃ……?」
 耳にかかる綾の息が荒くなった。突き上げる力が激しくなる。
 よく頭が働かないまま、命じられた通り、りょうちゃん、と呼ぶとくっと堪えるように彼は息を呑んだ。
 内側の質量が大きくなる感覚に、花は首を振って彼の肩にしがみつく。
「んぁ……っりょうちゃ、やだぁ……」
「ヤバイ……萌える」
 ぼそりと吐き出された怪しい呟きを追及することも出来ずに、揺さぶられて花は泣き声を上げた。
「……好きですよ――だから、いいですよね――」
 その呟きの意味を覚ることもなく。
 弾けるような衝撃に、花の意識はそこで途絶えた。
 その後。
 なし崩しに関係してしまったことに何度も後悔と楽観的思考をいったり来たりしつつ、
 恋人同士のようでいて幼なじみで、というよくわからない関係を続け。
 今度こそ、二人の関係が終わりを迎えるというその日――
 花は、綾の行動と言葉の真意を知るハメになるのだった。


 後の祭り。
綾は足フェチです。
あと、花限定ロリプレイを覚えた!
一気UPを予定していたくせに、途切れ途切れ引き延ばし更新をしてしまって申し訳ございませんでしたー!!
一度詰まると今まで書いてた文が全て駄文に見えて、もうどうしよう、みたいな。
三人称でラブシーン書くのが(サイトでは)初めてだったからかな。
まさに焦らしプレイ、ごめんなさいです……。
これ本編に入れるべきエピソードじゃないのか、という自分ツッコミを置いといて、
ちょこっとだけでもお楽しみ頂ければと思います。
2010.08/17

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