花嫁(三)
リースティアの腹の子のこともあり、シーアは兄と妹、腹心にだけ彼ら一族の事情を話した。
アレイストの求めていることも、併せて。
兄と妹は、驚きはしたものの、どこか納得したようにそれを受け入れた。
彼らが吸血を必要とする生き物であること。
そのチカラを利用して、リストリアを他国の干渉から守るということ。
その対価として、彼らをリストリアの民として受け入れること、一定の糧を望まれていること。
一族の長であるアレイストはおそらく信用できるが、そうではない者もいるだろうこと。
一方的な搾取は彼らの掟でも禁じられていること。
彼らに与えた領地がシーアのものであったことと、神事に関することを司る民が住まう地であることを合わせ、彼女自身がそこへ入り、監視を担う質になると、告げた。
それに否を唱えたのは、リースティアだった。
「お姉さまは兄上を支えるお仕事があるでしょう。神子姫は、民のすぐそばにいらっしゃらなければ。
私がエイスール様に嫁ぐことを、利用してください。長く芽生えなかった彼らの血を引く子を身籠った私は、あちらでは優位な立場です。お姉さまが信頼する神官を付けてくだされば、私でもお役に立つことが出来ます」
「リース……」
もう少し、妹に落ち着きを持ってと頭を痛めていたのはつい先日のこと。
だけれど、こんな風に妹に大人になって欲しいわけではなかった。
そしてそれが逃れられないことだということも、わかっている。
決断したのは国王だった。
「リースティア、成し遂げよ」
「謹んで、陛下」
初めて与えられた王よりの命令に、リースティアは瞳を輝かせ膝を折った。
ずっと、求めていた。
自分という人間が役に立てる場所を。
庇護されるだけでなく、兄姉の為に行動する時を。
愛した男を謀ろうと、優先順位は我が国、民にある。
リースティアは間違いなく、二人の妹。
リストリア王族の一人だった。