アストリッドの独白(7)
ひとしきり苦悩したアレイストが、キッとまなざしを鋭くしてミツキに詰め寄る。
「……ミツキ、男が女性に服を贈るということがどういう意味を持つかわかってるのかい」
『はあ?』
「イコール脱がせたいってことだよ!」
アホだ。
案の定、ミツキはうろん気にアレイストを見て、距離を取った。
『ほおお〜。全然知らんかったわ〜。これからは重々注意せなあかんな〜』
警戒の視線を向けられたアレイストが、うん? と首をひねり――自らのアサハカな発言に気付いて顔色を変える。
アホだ、アホすぎる。
城にあるミツキのワードローブのほとんど、アレイストが揃えた物なのにな。
「ミ、ミツキ、違うよ? 俺が贈ってるのはそんなつもりじゃなくて、」
『さようでっか〜。やっぱり持ってくの、もう一回考え直そ〜』
すでに詰めていた中から幾つかの衣服を取り出しながら、ミツキがうそぶく。
アレイストの慌てように、あたしはベッドで笑い転げた。
それを恨みがましそうに見るヤツの視線なんて気にならない。
――ねえ、女神。
あなたが彼に望んだのは、きっとこういう毎日。他愛ないことで笑い、ほころぶ、しあわせな日常。
王を甦らせたかったんじゃない。
きっと。
ただもう一度――彼を幸せに、したかったんでしょう?
ディルナシア――真月の母――。
それはきっと、
ミツキが叶えてくれる―――。