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▼ 伝えることのできない一言

「待ってください!闇慈さん!」

私は闇慈さんの袖をつかんだ。闇慈さんはこちらを振り向き、苦笑いする。

「悪いな、ななし。これは俺が決めたことだ」
「だからってあんな得体の知れない人のところへ行くことはないじゃない!」

私は必至になって闇慈さんを止めようとする。闇慈さんはどこか遠くへ行ってしまいそうな気がする。
時々話してくれた「あの男」のところへ行こうとしているのだ。「あの男」は正体不明の男だ。こんなやつについていくなんて正気の沙汰じゃない。

「いや、いやだよ、あんじ……」
「……すまねえな」
「あのね、実は……」
「……」
「ううん、なんでもない。とにかく行かないで」

私が懇願するように訴えかけても彼は聞き入れる様子がない。そして彼はそのまま消えてしまった。
あの時ちゃんと伝えていれば、止められた?いや、彼はそのまま進んでいこうとするはずだ。
残された私はその場で縮こまって泣き出すのだった。


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