▼ 誤解から
「あっ、ミリアさん!」
「……またあなた?」
私と会うなり、ミリアさんは怪訝な顔をした。こうまで不審がられると傷つくなあ。
そもそもそんなにミリアさんと会ってる記憶はないしミリアさんになにかした記憶もない。
なのになんでこんな怪訝な顔をされるのだ。
「……私、なんかしました?」
「とぼけないで、ヴェノムに私を差し出したじゃない」
「ヴェノムさんが実はアサシン組織のボスだってこと知らなかったわけですし……」
私は必死に言い訳をする。まあ実際本当にボスだということを知らなかったわけだったのだが。
ミリアさんは「じゃあ行くわ」と去ろうとする。慌てて私は前に出て頭を下げた。
「本当にすいません!ミリアさんの気が済むまで殴ってください!」
「……殴る気はないわ。じゃあね」
本当に去っていこうとするミリアさんの腕を掴む。ミリアさんがまた嫌な顔をする。
「あなたに構っている暇はないわ」
「だから!本当に!知らなかったんです!申し訳ございません!」
「わかったわ。あなたに免じて許してあげる。その代わり」
ミリアさんは言葉をためてこう言った。
「二度と私に近づかないで頂戴」
「ええー……。でも、ミリアさんがそれでいいなら」
「待って」
ミリアさんが私を止めた。なんだろう。
「……お茶くらいは付き合ってあげてもいいわ」
「それって!」
「勘違いしないで。ほら、行くわよ」
ミリアさんに促され、私は歩き出した。
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