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▼ ひろいもの

「お金が……ない……」

私は街の中でバッグを開け、絶望した。どうやら財布を落としてしまったようだ。
財布にそんな入ってないとはいえ落としてしまったのは痛い。今更来た道を戻って財布を探そうとも心が折れる。
ショックでこの場を動けず、そのまま立ち往生していた。街の人々の視線が痛い。

「うう、これからどうしよう……」
「おい、なんか困ってんのか、お前」

そんな時だった、立ち往生していた私に突然声がかけられた。
声のした方を見ると銀髪の男の人が立っていた。どことなく荒くれ者に似てるような感じがして鋭い眼光で見つめられるとちょっと怖いかも……と思ってしまった。

「なんか探し物か?」
「実は、財布を落としてしまって」
「財布……?ひょっとしてコレか?」

男の人はそう言ってオレンジ色のがま口を取り出した。「それです!」私はそう言って目を輝かせた。
男の人は「お、おう……」と引きながら財布を渡してくれた。私は財布を受け取り、お金も無事であることを安堵するのだった。

「あ、ありがとうございます!」
「そうかい、そりゃよかったな」
「あの、もしよければ、お礼させてくれませんか?」

私は男の人の手を掴んでそう言った。男の人は「あー……」と少し考えた後、「別にいいぜ」と引き受けてくれた。
半場強引とは思うかもしれないが財布を見つけてくれたことに感謝する。私は財布の中身を見た後、男の人に尋ねた。

「じゃあ、なんか奢ります」
「別に奢ってもらわなくてもいいぜ」
「そっか……じゃあ、梅干しとかどうです?」
「ウメボシ……ひょっとしてお前、日本出身か!?」
「わあ!」

急に男の人が私の手を掴み、目をキラキラさせる。
確かに日本出身とは言ったがそれだけのことで目を輝かせられるものだろうか。いや、日本は消滅した国だ。
その日本が消滅したことはおそらく知っているだろう。まさか、自分が日本出身ということでどこかへ売り飛ばされる……とは思えないような目の輝きだしなあ。
目をキラキラさせる男の人に、梅干しを1つ渡した。男の人は梅干しを平らげ、一瞬しかめっ面になった後こちらをじっと見つめた。

「なんというか、酸っぱいんだな、ウメボシってやつは」
「それが梅干しの魅力ってやつですよ」
「まあ、美味しかったぜ。お前、名はなんていうんだ」
「ななしです。私が日本出身ってことは黙っていてくださいね」
「OK。オレはチップっていうんだ。また会おうぜ」

チップと名乗った男の人は去っていった。風のような速さであっという間にチップさんの姿が見えなくなる。
また会えるときがくるだろうか、と思いつつ。私も街を歩き始めるのだった。

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