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▼ チョコレートは彼から

「おーい、ななしちゃーん」
「あれ、アクセル、何時の間に」

私は手を振って駆け寄ってくるアクセルの姿を発見した。どうやらこの時代に戻ってきたというのだろうか。
私はアクセルと合流して、「久しぶり」と声をかけた。アクセルはまんざらでもない顔で笑う。

「しかし、ここはホントに変わってないね」
「そうだよ。大きな出来事とか起こってないもの」
「……さて、ななしちゃん。今日はなんの日か知ってるのかね」
「へ?」

突然のアクセルの質問に私は一瞬呆気にとられた。もちろん今日が何の日かは知っている。バレンタインデーだ。
そのバレンタインデーが今日だと知っているのかアクセルからの視線がどこか期待に満ちている気がする。羨望の眼差しがキラキラしてやがる。

「もちろん知ってるよ。バレンタインデーって奴でしょ」
「そうそう!で、ななしちゃんはなにか渡すものとかないのー?」
「う」

私は今日がバレンタインとは知っていたが、チョコの用意とかはしていなかった。
今アクセルにあげれるものは何もない。チョコレートどころか何もないのだ。
私は無言でどうしようか考え始めた。アクセルは「まだ?」と無邪気に聞いてくる。

「……ごめん、今、あげれるものなんてないよ」
「……マジで?」
「うん。じゃあ、今から買いに行く……ってなんで腕掴んでんの」

私は買い出しに行こうとしたがアクセルに腕を掴まれた。
私はこのままポカンとしていると、アクセルが手に何かを握らせてきた。何かと思って開けてみると一粒のチョコレートだった。

「アクセル、これ……」
「必要以上にせがんでゴメンな!気を悪くしたならこのチョコ、あげる」

アクセルはそう言ってウィンクをした。
私の方こそチョコを送るべきなのに……と思い、なんだか申し訳なくなる。アクセルはそんな私の気持ちを知ってか知らずか頭を撫でてきた。

「そんな気を背負わなくても大丈夫だって」
「ごめん、アクセル。でも、ありがとう」
「いいってことよ」

アクセルがニカッと笑った。つられて私も笑う。
今度会ったときにお返ししよう。と私は心に決めるのだった。

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