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▼ ビタースウィート

「ボス、書類です」
「……ああ。そこにおいてくれ」
「かしこまりました」

私はそう言って、書類をボスの机に置いた。
ボス―――アサシン組織のボスであるヴェノムは黙々と書類に目を通しながら作業を続けている。
そんなボスに気づかれないように私は何かを取り出した。

「……今の内においても大丈夫かな」

私が取り出したのは、シックな包装紙に包まれた箱である。世間では今、バレンタインデーである。中身は当然チョコレートだ。
そんなバレンタインデーに浮足立つ者は多いという。かくいう私もその1人だ。
私はボスに気づかれないように箱を書類の上に置こうとしていた。

「……何をしているのかね」
「うわあ!」

私は突然の声に驚いた。声の主はもちろんボスである。
私は驚いた拍子に箱を落としてしまう。ボスの髪で見えないが箱をじっと見てるように感じる。

「あ、あの、それは、その」
「バレンタインデーというやつか」
「あ、ハイ、そうです」
「……」
「ボス?」

ボスは無言で箱を拾い上げ、包装紙を破った。そして箱を開け、チョコレートを摘まんだ。
少しの無言が流れた後、ボスが「……美味しいな」と言葉を発した。と、とりあえず喜んでもらえたようだ(?)
そしてボスは私の方を向いて、礼を述べた。

「ありがとう、ななし」
「よ、よかったー……」
「そろそろ仕事に戻ってはどうかね?」
「あ、はい、では、失礼します」

私は逃げるように部屋を出て行った。実は恥ずかしさで顔が熱い。
私はボスが喜んだ姿を見て、嬉しくなった。さあ、仕事へ戻ろう。


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