夜中のできごと
私は食堂に向かう途中、クラウドさんとすれ違った。
クラウドさんはなにか考えながら歩いている。このままじゃ階段の手すりと衝突しそうだ。
「あの、クラウドさん、ぶつかります」
「……ああ」
クラウドさんは気が付いたのか、階段とぶつかる一歩前で止まった。大惨事になる前に気が付いてよかった。
クラウドさんは私の方を向いたと思えば、こう呟いた。
「ななし、どうかしたのか」
「い、いえ、全然」
「そうか、後前々から言おうと思ったが……へっぴり腰をどうにかしろ」
「へ?」
クラウドさんはそう呟いた後、去っていった。
私、そんなへっぴり腰だったかな。と思いつつ、その場に座り込んだ。
「クラウドさん、何を言おうとしていたんでしょうか」
「あれ、ななし!」
突然誰かから呼ばれた気がした。デイジーさんだ。
デイジーさんは手を差し出した後、私を立たせた。
「ありがとうございます、デイジーさん」
「ねえ、ななし。どうしたの」
「さっきクラウドさんにへっぴり腰とか言われちゃって」
「ああ!あれね!」
デイジーさんはポンと手を叩きながら納得してしまった。納得するのはいいけど、それがなんなのか気になるばかりだ。
「この前、ななし。夜中トイレに行こうとしてたじゃない」
「うん」
「帰る途中、誰かとぶつかって腰が抜けたらしくて」
「あー、ありましたね、そんなこと」
「自分の部屋に戻る時、ほふく前進で戻ったってスネークさんが言ってたよ」
「えっ」
夜中に何をやってるんだ私。というか腰が抜けたどころの話じゃない。
そういやこの前、誰かとぶつかった気がする。なんでそんなことを忘れていたんだろう。
「あのさ、誰とぶつかったんです?」
「クラウドだよ」
「そういやそんな人だった気がしますね……」
後でクラウドさんに謝りに行こう。と私は呟くのだった。
戻る