触りたくなる
「あれ、ブラックピット君」
私はリビングを出ようとドアノブに手をかけたとき、ブラックピット君を発見した。
ブラックピット君はすうすうと寝息を立てながら眠っている。
「毛布でも持っていくか」
私は毛布を持ってこようとまた部屋を出ようとする。と、その時、目の前にあるものが飛び込んできた。
普段はバサっと広げている黒い羽根が、眠っている時は閉じていたのだ。
「……ちょっと触るくらい、いいかな」
私はゆっくりブラックピット君に近づき、羽を触る。
黒く、美しいその羽はしっとりとしていてどこか暖かかった。あまりにも気持ちいい感触に私は思わず声をあげそうになる。
「暖かい……」
羽を触っていると、ふいにブラックピット君の目が覚めた。
ブラックピット君は私の手を見、私の方を見ながらこう言った。
「……何をしている」
「あ、いや、別に下心なんて」
「変な触り方をするな」
ブラックピット君はふいとそっぽを向いてしまった。
私は思わず「ごめんなさい!」と叫んだ。声に驚いたのか、ブラックピット君は固まってしまったようだ。
「すまん、さっきのはオレもやりすぎた」
「じゃあもう一回、触らせて」
「やめろ」
ブラックピット君はソファから立ち上がり、リビングを出て行ってしまった。
やりすぎた、と思いつつ私は何か持ってきてあげようと思うのだった。
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