もう秋だ
夏のうだるような暑さはすぎ、世間では秋と呼ぶ季節になった。
私もまた、秋の装いに着替え、フロアへと向かう。
「こんにちは、ななしさん」
「こんにちは、ネス君」
「もう秋なんですね。早いなあ」
ネス君は私の装いを見ながらそう言った。今の私の恰好は、シャツにカーディガン、ロングスカートだ。
ネス君を見ると、まだ半袖短パンだった。さすがにちょっと肌寒くはないだろうか。
「ネス君、寒くないですか?」
「僕?そんな寒くないよ」
「さすが、子供は風の子ですね」
「あっ、ネス、ななしさん!」
声のした方向を私とネス君は振り向いた。廊下から走ってきたのはリュカ君だ。
リュカ君は走ってきたのか額にはうっすら汗が見えていた。息はきれていない。
「どうしたの?なにかあったの」
「ネスとななしさんが見えたんで走ってきたんです」
「そんな急がなくてもいいじゃないか」
「でも、2人が見えたから……えへへ」
リュカ君は照れながら頭をかく。かわいいなあ。
ふと、リュカ君の恰好を見てみると、ネス君同様半袖短パンだった。やっぱり子供、寒くないのだろうか。
「リュカ君も寒くないんですね」
「うん。今は割と涼しいよ」
「そっかー。私は寒くなってきたかな」
「あ!ななしさんも一緒に野球しませんか」
ネス君は何かを思いついたように提案した。野球をしようと誘ってきたようだ。
今日は特になにもないし野球をやろう。そう思ったが今の恰好じゃ動きにくい。一度着替えなおさないといけないな。
「いいよ。ちょっと待っててね」
「わかった。僕たちもみんなを集めてシュミレーションルームで待ってるよ」
私はそう言って自分の部屋へ向かった。廊下の窓を見ると、赤とんぼが飛んでいる。
もうすぐ秋がやってくる。私はそう思いながら走り出すのだった。
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