『一静、別れよう』 掛かってきた電話は、愛しい彼女からで。ただ内容は愛しいどころか面食らうもので。 「は…?ちょっ待って、何で?」 『…一静は私なんかより…っ…ごめんっ…』 「名前、ちゃんと話をしよう」 『…ごめん…』 さよなら。と切られた電話は通話画面から、名前と二人で旅行した時の風景写真の待ち受け画面に戻っていて。俺何かしたか…この前デートした時も別れるような原因や兆候なんてなかったし、寧ろこれからの事を話していたのに。 「…意味分からねぇー…」 何度かけ直しても出てくれない電話。名前の家に行くしかないが、行ったところで名前が出てきてくるのか、ちゃんと話をしてくれるのか。 「松川くん、どうかした?」 「…ちょっとな…」 「?あっ彼女さんにアレ渡せた?」 「…あー…」 もうすぐ記念日だからと名前の為に買ったプレゼントがこのままでは無駄になりかねない。 「………まさか…」 名前ならあり得る、とりあえず俺がするべき事は決まった。 「名前、今日暇だよね!」 「…暇だけど確定しないでよ…」 「いいじゃん、呑みに行こう!」 そんな気分ではないが、断れる雰囲気でもなく仕事が終わって連れてこられた店は、名前にとって思い出が溢れる店で。電話が掛かってきたから先に入っていてーと促されて座った座席も狙ったかのような場所で。懐かしい、と口から溢れた言葉は誰にも拾われない、はずであったのに。 「…本当懐かしいよな」 「!えっ…一静…」 「名前」 何で…という疑問は後々答えるとして、とりあえずちゃんと話をしなければ。 「名前さ、何で別れようなんて言ったわけ?」 「…っ…」 「一方的に言われても俺は納得できない」 「……一静が可愛い女の子と一緒に買い物してたから…」 「それを浮気だと思ったわけ?」 「………」 浮気、なんてよりもお似合いだなと思った自分が悲しくなったと泣きそうな名前に溜め息が出たのは仕方ない。 「…溜め息吐いた…!」 「そりゃ吐きたくもなるだろう…名前が見たのは同僚だよ」 「…同僚と…」 「馬鹿。同僚が彼氏に買う誕生日プレゼントを選びたいから買い物に付き合っただけだよ」 「……へっ…?」 「ちなみに同僚の彼氏は俺の友達」 誤解していたことが分かったらしく、本当ごめんなさい!と勢いよく頭を下げた名前に、俺も誤解させるような事をしたからお相子なーと頭を撫でた。 「このまま終わりになったらどうしようかと思った」 「…っ…一静…」 本当に。このまま別れたら立ち直れる気がしなかった。それでも誤解は解けて、また俺のところへ戻ってきてくれた。 「これからもよろしくな」 「こちらこそ…ごめんなさい」 「もういいよ。…あとこれ貰って」 「?」 同僚のアドバイスもあって、もうすぐ記念日だからと買ったプレゼントは仲直り記念日も兼ねる事になるとは思わなかったけれど、また二人で始めよう。 なかさ様 [一方的な誤解で別れた彼女とやり直す]「このまま終わりになったらどうしようかと思った」という事で。見事に誤解した名前ちゃんでした。名前ちゃんの同僚は松川に頼まれて、思い出のお店に名前ちゃんを連れていきました。(同僚ちゃんは今度イイ人を紹介してもらえるでしょう) 感想ありがとうございます!10万hitを超えることが出来るなんて嬉しい限りです!全部好きですなんて嬉しすぎます…!応援ありがとうございます、これからも頑張ります! リクエストありがとうございました!(御井) |