「…はぁ…」

吐き出した溜め息は何度目か。お互い仕事が忙しく、会社の場所も住んでいる場所も違うため中々会うのは難しい。そんな事分かりきっている。

[ごめん今日会えない]

このメッセージを受け取るのも何度目か。分かってる。仕事で忙しくて今日は会えない、ごめんね。そういう意味であるのは分かる。でももしかしたら一静はもう私の事を…なんてマイナス思考良くないって分かってる。でも

「…もうダメかもね…」

呟いた言葉が自分に追い討ちをかけているようで悲しくなった。



[今日少しだけ会えない?]
[仕事終わるの遅いよ?]
[平気だよ!]
[じゃあ終わるくらいに連絡する]
[分かった、待ってるね]

「………」

仕事がもうすぐ終わる。と連絡をもらい待ち合わせ場所で一静を待ちながら、何と言えばいいのか、何て言えば傷付けずに済むのか考えてみるけれど、答えなんて出なくて。でもこのまま行ったらきっと一静に振られる。

「…名前!」
「一静、仕事お疲れさま」
「ありがとう。飯食った?軽く何か…」
「…一静」
「ん?…名前?」

言わなきゃ、一静に振られる前に。自分が傷つきたくないだけなのだろうけれど、それでも。

「一静、あのね、」
「嫌だからな」
「…へっ?」
「…名前が何言おうとしてるのかは分かる」
「!一静…」
「名前以外を今更好きになんてなれない」
「…一静なら良い人いっぱいいるよ…」
「俺にはお前しかいない」

ごめん、寂しい思いさせて。耳元で聞こえた声は苦しそうで。私を抱き締める腕が強くて苦しくなって、それ以上に嬉しくて目の奥が熱くなった。

「一静っ…ごめんね…」
「俺こそごめんな」
「…一静、あとちょっと恥ずかしいかな…」
「あっ」

外で抱き締め会うのは、流石に恥ずかしい。けれど離さないでほしいとも思う。

「…俺んち来る?」
「うん。ご飯良かったら作るよ?」
「まじか!名前の飯久々だなー」
「私は一静の家久々だなー」

ふたりで手を繋いで一静の家まで帰った。次の日、中々私を離してくれなかった一静が子どもっぽくて可愛いと思ったのは私だけの秘密。


かおる様 「社会人同士でなかなか会えずまっつんの気持ちもわからなくなってきたヒロインがどうせ振られるならと自分から別れを切り出す…」というリクエスト、ありがとうございました!社会人松川を想像しながら書いていて、とても楽しかったです。切なすぎないように書きました。
いつも楽しく読んでいただいてるという事で感謝です!!これからも頑張りますのでよろしくお願いします!(御井)





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