神父淫魔3 | ナノ


よほどたくさん溜め込まれていたらしい彼の精子は、俺が想像していた通り熱くて濃くて、若い精の力に満ち満ちていて、とても美味しい。性的嗜好はともかくとして、やはり肉体労働系青年は元気だ。
「あんっ……ぅあ、……んっ、あはっ……きもちよかったぁ」
思わず綻ぶ口元を手で隠し、ようやく満足した俺は彼のペニスをずるりと引き抜いた。
すっかり萎えきったそれは、先ほどまでの滾りようとは打って変わって実にしょんぼりと力なく俺の胎内から抜けていく。溜め過ぎて緩く泡立てた生クリームのようだった精液も、今はすっかり出し切ってしまったようで、うっすらと白く濁っただけのさらさらとした粘液を鈴口から零すばかりである。
「やり過ぎちゃった……」
あんなにつやつやとしていた肌も、今はもう憔悴しきったようにくすんでいてまさに廃人のようだ。それとは反対に、俺の肌は先ほどよりもつやつやと輝いていた。
「どう見てもやり過ぎだよね……まずいかも……」
ぐったりと動かない青年を前にして、久しぶりに俺は焦っていた。
流石にこんなに吸い取ってしまっては死んでしまうかもしれない。
「ちょっと精気戻してあげるね」
渇いて半開きになっている青年の唇に自分の唇を重ね、青年の舌に己の舌を絡ませる。ねっとりと舐めあげ、俺は彼から吸い取った精気を注ぎ込んだ。
「……んっ、ふ、む……ぷぁっ……これでよしっと」
唾液で濡れた唇を拭い、青年を見下ろす。無理やり精気を流し込んだお蔭か、土気色をしていた頬にも微かに赤みが差していた。
そこで俺はようやくふう、と安堵の溜息を吐いて立ち上がった。
先ほどの甘い香りが混ざった風と、窓から差し始めた朝日を浴びて、くらりと眩暈がする。光をもろに受けとめてしまった目をぱちぱちと瞬かせ、俺は光を遮るようにフードを目深に被った。
「朝だ……」
燦々と降り注ぐ太陽の光を恨めし気に見つめ、呟く。
「やだなぁ……早く帰ろうっと」
苦手な朝日にも気が付かず、空腹に負けてついつい長居しすぎてしまったようだ。白み始めた東の空を睨むように見つめ、羽を広げた。
昼間はろくな事が無い。身体はだるいし、ただひたすらに眠い。こういう時、俺は自分と人間との違いを感じる。悪魔と言うだけあって光には弱い。光を浴びて重たくなり始めた身体を叱咤して、カーテンの影に隠れる。
(怠いだけならまだいいんだけど、最近はうっざいのがいるんだよなー……今日は遭いませんように)
そう。生まれてこの方天敵と言うものに出会った事が無かった俺にとって、生まれて初めて出会う『天敵』である。まさに目の上のたんこぶ、鬱陶しい存在だ。しかも奴は職業柄、朝がべらぼうに早く、何故か俺の気配を犬のように察知してくるため、出遭わないためには兎角急いでねぐらに帰る事しか手段がない。すっかり辺りを照らし始めている太陽を背に、俺は窓辺から飛び降りた。
ばさりと蝙蝠のような形状をした羽を広げ、風の抵抗を利用して一旦地面にふわりと降り立ち、その勢いで強く跳ね上がるように地面を蹴り上がる。
森の木々が眼前にまで迫り、身体が安定して空中に浮かぶとようやく安堵する。
……………が、その安堵も束の間のものだった。

風を切るようにして突如、謎の飛行物体が俺の頬を掠めた。
ヒュッという風を切る音と共に、少し遅れて頬にぴりっという鋭い痛みが走る。と、同時に背筋に走る悪寒。俺は恐る恐る謎の飛行物体の正体を目で追った。
ズガンだかズドンだか、なんとも形容しがたい大きな破壊音を立てて、地面にめり込んでいたもの。それは教会の屋根のてっぺんにある木製の大きな十字架だった。有り得ない。俺の身体よりも人割は大きい巨大な十字架が空中を飛んできたのだ。重さも勿論半端ないものである。
とてもではないが、人間に出来る技ではない。とはいえ、この村にはそんな所業が出来る動物は存在しない。しかし俺には一つ心当たりがあった。
恐る恐る十字架が飛んできた方向に目を向けると、それは案の定恐れていた人物による仕業だった。
「いいいいいざああああやああああああくんよおおおおおおおお」