「こりゃ……また派手にやったな……」 特徴的なドレッドヘアの男は俺を見下ろし、困ったように言った。むせ返るような独特な臭気に、顔を歪めている。 この男はシズちゃんよりも先にこの村に派遣されてきていた先輩神父だ。シズちゃんよりも身長は低いし、いまいちぱっとしない容貌をしているがこれでも俺はこの男から一度も精気を吸ったことが無い。なのでやはりこの男も侮れない人物なのだろう。 「どうしますかね」 「このままにはしとけんだろ……いくらなんでもよ」 「そうっすよね」 俺を囲んでのんきにそんな話をしている男二人は、腕を組んでうーんと唸っている。 そしてドレッドの男がちらりと俺を見た。それからふう、と溜息を吐いてぽんっとシズちゃんの肩を叩く。 「しゃあねえ。ここに置いとくか」 「えっ!?」 ドレッドの男がこれ以上案は無いと頭を掻いた。驚いたのは俺の方だ。ここに置く……という事はここでこの暴力神父たちと一緒に暮らすという事だ。こんな据え膳、俺には我慢できない。今は無理でも、一緒に暮らすのならばいつかはシズちゃんの童貞を奪ってやる。 「でも、こいつまた今日みたいに襲ってきますよ。危険じゃないですか?」 「俺たちは神の教えに従って生きてんだから、その通りに振る舞ってりゃこんな淫魔には屈しねえだろ。それに、いくら悪魔とはいえ下級だしよ、無下に殺すのは教えに反するしだからっつって野放しにしちゃ若者の風紀が乱れるし……。そんならここに置いとくしかねえだろ」 シズちゃんはどこか不満げだったが、ドレッドの男に言いくるめられて頷いた。 「でもただここに置いとく訳にはいかねえから、きっちり仕事はしてもらうぜ。家事とか掃除とかよ。……おっと、でもまた薬盛ったりしたらただじゃおかねえぞ?」 念を押すように睨まれ、ぐっと息を呑む。またこんな事をされてはたまらない。しかもここは教会の中で通常の状態でもただでさえ魔力が出しづらい。ここに置かれるという事はもっと強力な封魔のまじないをされるという事だろう。 ここは大人しく従うのが恐らく最善の策である。 俺はぎゅっと目を瞑り、来るべき事態に備えた。最悪、滅されても仕方が無い。 死にたくは無いが、またこれ以上酷い目に合わされるのも嫌だ。 そう身構えた俺を迎えたのは意外な顛末だった。 → |