神父淫魔(完) | ナノ





甘い酸っぱい香りが教会の礼拝堂いっぱいに立ち込め、礼拝に来た村人たちはその香りに皆揃って顔をほころばせていた。
今日は村で生まれた赤ん坊の洗礼があるらしい。生き生きと瑞々しい生まれたての生気の匂いに思わず俺も鼻をひくつかせる。
まだ未熟だが、とても生命力に溢れた命の匂いだ。食べるにはまだ早すぎるけれど、これからが期待できる。
俺が教会側に捕まって半年、村に出没していた淫魔がいなくなった事で、少しずつ村の若者たちが活気づいてきた。
今まで『溜まる』という事を知らなかった青年たちが嫁探しをし始め、仕事に出始めた。体力が有り余っているのでどこの工房や店でも生き生きとした顔の青年たちが働いている。
村人たちの元気な姿は俺も見ていて楽しい。目に見える変化と言う形で出始めたのは最近になってからの事だったが、どんな形であれ、人間たちが色々な表情を見せる姿はたまらない。
俺は、と言えば、教会の裏手で積んだ苺をこさえて冬場に備えたジャムを煮ていた。
あれから俺は魔力封じの印を身体に入れられ、教会で馬車馬のように働かされている。
今日も早朝から水を汲んで、朝食を作り、シズちゃんたちの衣服を洗濯して教会や部屋の掃除、様々な雑務をさせられていたところだ。
元々、淫魔も手伝い妖精たちと似た種族なのでこういった家事全般は得意なのだが、その主人がシズちゃんだという事が気に食わない。
「おーい、臨也―」
「なんですかトムさん」
「ちょっと悪いんだけどよぉ……」
今ではすっかり馴染んでしまい、教会のお手伝いさんと化している。
特にシズちゃんは服をよく汚すので、シズちゃんの衣服の洗濯も最初は手こずったものの今ではコツを覚えてあっという間にぴかぴかだ。
魔力が殆ど使えないため、不便なこともたくさんあるけれど我慢できない程じゃない。トムさんもこうして時々は俺を外に使いに出してくれるし、ストレスもそれほどたまらない。
しかし、この教会の男どもはとにかくガードが固い為非常に性欲が溜まる。
これまでも何度か夜這いにチャレンジしてみたのだが、その度にきついお仕置きをされた。
確かにお仕置きも悪くは無い……悪くは無いのだが、俺だって腐っても淫魔である。主導権を握ってひいひい言わせてやるのが淫魔だ。それなのに、簡単に組み敷かれて「ごめんなさいは?」と問われるのは屈辱以外の何物でもない。
でもそんな日々も長くは続くまい。あいつらだって所詮人間だ。気持ちいいところを突かれればいずれ俺に籠絡する筈。
(いつかぜったい逃げてやるんだからな……!)
そんな決意を胸に秘めて、おつかいのための籐かごを握りしめた。













淫魔退治メモ☆
『呪詛と祈祷ではインキュバスを殺す事は出来ず、退けるだけである。
レギナルド・スコットは夜、牛乳を出しておけばよいとしている。
「ファウスト」によると、コボルトと同一視され、家事の手伝いをする』←教会で飼われる淫魔たんハアハア。ご飯作ったり掃除したり嫁やんハアハア

…………↑。
詰まった時のメモを発見したので貼り付けてみました。
以外に淫魔たんは奥が深いです。
一万ヒットありがとうございました!