神父淫魔6 | ナノ



こっそりと窓の外から中の様子を窺う。幸いシズちゃんはもう寝ているようだ。それもその筈。教会の者は五時の礼拝六時の夕餉、その後二、三時間の自由時間を挟んで夜九時には消灯が基本だからである。
(絶好の夜這いチャーンス!)
芳しい香りが鼻腔を擽り、俺の空腹は既に臨界点を突破している。
教会の土地に足を踏み入れた瞬間から漂ってくる魅惑的な香りは、やはり予想通りシズちゃんの部屋に近づくにつれてどんどん強くなっていった。この狂おしいほどに官能的で魅惑的な香りがあのシズちゃんから発されていると思うとどうにもこうにもいけすかないが、そんな事よりも今はこの香りの元、強い精気もとい精子をこの体に取り込むほうが先である。
俺の企みの事など露知らず、シズちゃんは寝所ですやすやと阿呆面を晒して寝息を立てていた。何を隠そう、こんな事もあろうかとシズちゃんだけでは無くこの教会の食事全てに淫魔直伝の強力睡眠薬EXを混入しておいた。因みに、シズちゃんの分だけ友達の闇医者から買い取った媚薬入りの特別性である。これで鉄壁のシズちゃんもイチコロ、精力絶倫、ちんこはビンビンの拍手喝采だ。
しかし計画を実行する前に、俺の異様に低い体温や嫣然たる魔力の匂いでシズちゃんが起きる事も無いとは言えない。そんな万が一に備えてこれも友達の闇医者に分けてもらった魔力を抑える薬草をたっぷり使った風呂にも入ってきた。そのお蔭で今の俺の身体は丁度良い具合にほっこりほこほこ、素敵に無敵な淫魔さんである。魔力は抑えていても、素早く精子を胎内に取り込めば元に戻る筈なので問題は無い。
「待ってろよーシズちゃん……俺がその余裕な阿呆面ひいひい言わせてやる……!」
そろそろとベッドに上り、様子を伺いながらシズちゃんの寝巻を剥ぐ作業に取り掛かる。
計画としては、媚薬でいい感じになったシズちゃんに跨って騎乗位でガンガン攻めまくってドピュッと精子を頂く。それを摂取した俺は直ちに元気百倍、とりあえずシズちゃんを泣かす。下剋上といった具合だ。
常人の倍は盛ったので早々起きることは無いだろうが、のんびりしてると何が起こるか分からないのが平和島静雄だ。なのでさっそくシズちゃんの下半身を包む簡素な寝巻の紐を解いた。
(あ……は、やばい、これ、)
寝巻を半分ほど脱がせたところで、あの甘美な香りが一層強まって俺の鼻孔を擽った。やはり本物は違う。空気中に漂っているものよりも格段に生々しい香りは俺の下半身をダイレクトに直撃した。その上魔力のガードが甘い今は教会の影響をもろに受けているし、かなりしっかりと理性を保っていないと直ぐにでも腰が抜けてしまいそうだ。ただ目の前にあるだけなのにまるで自分が焦らされているかのような、粟立つようなぞくぞくとした寒気が背筋を襲う。
ふるる、と身体を震わせ、今にもしゃぶりつきたい衝動を抑える。平静を保つ為に頭の片隅で素数を数えた。このままでは計画が台無しだ。バクバクと早鐘を打つ心臓と俺の身体は媚薬も飲んでいないのに熱く火照り始めていた。緩く持ち上がり始めているそれにごくりと喉が鳴る。意を決して下着に手をかけた。
下へ、下へとそれを引き摺り下ろす。
あともう少しでシズちゃんの隠れたそこが顔を出す。
心臓が早鐘を打ちながら俺の手に汗をじっとりと湿らせた。

「!?」
突然、折れそうなくらい強い力でがしっとその手が掴まれる。そのままあっという間に捻り上げられ、俺の身体は柔らかなベッドから引きずり降ろされた。
「……つぁっ!……いったぁ……」
そのまま硬い床に寝転ばされ、ごちっと頭をぶつける。涙でぼやけてピヨピヨ白黒する視界を開いた。その隅に金髪。髪の毛を掴まれ、強引に顔を上げさせられる。その衝撃で途中まで数えていた素数を忘れてしまった。はっとした瞬間、一気に現実に引き戻される。
「…………ッ!」
「…………よお、臨也君。こんな時間に何の用かなぁ?」
眼前まで迫る鳶色の双眸にぞくりと背筋が凍る。嘘だろ、と呟こうとした喉はひりひりと乾いて引きつった声を出した。
「シズ……ちゃ、ん」