長編 | ナノ

 第004夜 闘争



「お前、コムイが言ってた適合者だろ。探索部隊に化けてるとはな」
『………』


男は刀にかける力を一向に緩めようとしない。というより増している。
どうやらこの男は私が適合者だからといって手加減する気はないらしい。無論こちらもそのつもりだが。


「始めに言っとく。怪我したくなかったらすぐに武器を置け。俺は誰だろうと容赦しないぜ」
『………』


冗談。そんなこと出来るわけがない。そんなことしたら私は一生エクソシストとしてここにいなければならない。それだけは、絶対に嫌だ。
私は一気に刀を押し返し、その場から飛び退いた。


「…!!」


私が着地するのと同時に男も体勢を立て直す。


「…どうやらその気はねェみたいだな」


私のどこか嘲笑うような笑みと今の攻撃でそれを悟ったらしい。
戦闘は避けたかったが、仕方がない。この男さえ倒せば私はもう自由なのだ。
私は発動し、短剣を数、大きさ共に男と同じものにする。
私の様子を見た男も発動した。


「…本気でいくぜ」


ダッと互いが同時に動く。
だんだん縮まっていく距離。




ギイィンッ!!




2つの刃は派手な金属音を森中に響かせ、ぶつかり合った。
それと同時に手に鈍い衝撃が走る。互いが武器に掛け合っている力の分だけそれは凄まじいものであった。
私と相手は共に顔をしかめるが、それから常人には目に見えないであらう速さで互いに武器を交わす。
――…強い。
思ったより苦戦する相手だった。隙がないため何処も狙えない。
だがそれは相手も一緒。こちらもむやみに隙を作ったりしない。
まぁ要するに互角というところだ。
個人的には楽しめる相手なのは嬉しいのだが、今はあいにく私は逃走者。早く決着をつけてしまわないと多くのエクソシストがここに来て、戦わなくてはならなくなる。さすがに今の私はそこまでの戦力と体力は持ち合わせていない。


――…殺す。


一番手っ取り早い手段だ。そもそも殺さない理由などない。
相手はエクソシスト。私が恨み、憎み、消すべき存在。
だから、殺してやる。
男の攻撃をかわすと私は退いて、木の上に飛び乗る。


「どうした。観念したか」


男が薄く笑いを浮かべて言う。
そのつもりがないことなど分かっているはずなのに。
こいつもあいつと一緒。人を玩んで楽しんでいるのだろう。


だがもう戯れは終わり。


私は剣を縮めて再び2本にする。
そして3本、4本、5、6、7、8…と、どんどん分裂させていく。


「っ!?」


さすがに2本以上は無いと思っていたのか、男は驚いている。
私は腰のベルトから鎖を取り出し、合計9本まで分裂させた短剣を連繋ぎに鎖へと繋いでいく。
完成したのはまるで身体中に角の生えた蛇のような私の武器。


これが…第2形態。


私はそれを率いるように鎖の端を肩にかけ、男の元へと飛ぶ。
ジャラジャラと後ろで鎖と短剣がじゃれつく音を聞きながら、私は腕を振り上げ、鎖を前へと降り下ろす。
私の後ろから来た鎖は弧を描いて前方へと放たれる。


「ちっ…」


ドドドド!!と鎖が地面に叩きつけられ、短剣が次々に突き刺さる。
私は地面へと着地し、土煙が上がる森を見渡す。
当の男は横に飛び退くことで軽くかわしていた。
が、何故か先程までいたはずの所にいない。何処へ行った?


「後ろだ」
『!!』


振り向くのと同時にドスッと男の刀が私の腹へと打たれる。


『……っ』


私は痛みに思わず顔を歪めるが、斬られてはいない。峰打ちだ。
何かと言いつつも容赦する気はあるらしいが、こちらには関係ない。
私はジャラッと鎖を持ち上げる。
とっさに防御をとったため、軽い痛みで済んだ私の身体はまだまだ動く。
私は男から離れると近くの木に鎖の先端の短剣を突き刺す。


「!?」


そして、男の周りを木々を足場に旋回する。
相手の速さも半端ではないが、負ける気はしない。
ぐるぐると回り、相手に鎖を巻き付けていく。


「ぐっ…!!」


1メートル程残し、鎖を全て男に巻き付けた。
その手に握られていた刀は落ち、男は思いきり無防備になった。
――なめてるからそうなるんだよ。
私は心のなかでクスッと笑った。手加減しなかったら勝てたかもしれないのに、と。動けずに幾重にも巻かれた鎖の中でもがく男が滑稽に思えて仕方がない。
男からダラダラと血が流れていく。
当然、鎖を巻く時には刃を立てた。
腹。腕。背中。脇。上半身のいたる所に計9本の短剣が刺さっている。
縛るだけでもよかったが、苦痛は味わわせてやらないと。
私は鎖を緩めることなく男へと近づいた。


「くそっ」


まだ男は逃れようともがいている。短剣が刺さっているから動いたら痛いだけなのに。


『………』


木へと鎖で繋がれたエクソシスト。
さて、どうしよう。切り刻んでバラバラにしようか。それともひと思いに真っ二つとか。とにかくこいつの体で遊んでやりたい。
悩み所ではあったが、生憎私には時間がない。
――よし、手早く串刺しにしよう。
とてもお手軽。ただ刺すだけなのだから。
他のエクソシストの見せ物にでもなってしまえ。
私は男に刺さる短剣を1本抜く。


「ぐあっ」


男の鮮血で輝く私の武器。
生憎今は9本までしか生み出せない。シンクロ率の問題だろう。もっと強くなってレベルを上げていかなくては。
男から抜き去り、鎖から外した短剣を私は自分の身長を越えるぐらいまで巨大化させていく。
――これくらいかな…?
人を突き刺すことが可能なくらいの大きさまで剣は巨大化した。
己の二倍くらいであろう剣を持ち上げる私を驚愕の目で男は見る。
だが軽々と、というわけにはいかない。かかる重量が半端なく、持っているのは正直キツいのだ。
さて、あとは刺すだけだ。腕も疲れるし時間もないし、やってしまおう。
私は地を蹴り、宙へと飛び上がる。一回転して勢いをつけ、未だに逃げようともがき続ける男へと剣先を向ける。
――死ね…。
私は全重力と体重を剣に乗せ、下へと落下する。
私はただ…笑っていた。





第4夜end…



prevnext

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -