ss | ナノ
皮肉のように晴れ渡った青い空。その真ん中には何かの嫌がらせかというほどに輝く太陽。
真夏日、というのは今日みたいな日を言うのだ。なまえは既に何度暑いと呟いたことか。もうそれを言うのも飽きてしまったが、やはり暑いものは暑いので自然と口をついてしまう。このまま暑い空気に晒されたままでいるといい加減馬鹿になりそうだったので、親友の水町を引っ張って巨深の屋上へ。その手には二本の棒アイス。
口の中に突っ込むようにして渡してやれば、水町は子供のように飛び跳ねて喜んだ。服を脱ぐというおまけつきで。なまえは慣れているので特に気にもせず、アイスを銜える。日陰に座っているというのに、それは既に溶けかけていた。
「あー…暑い…」
「だなー」
「いいよなお前は涼しそうで」
「んじゃあなまえも脱いだらいいんじゃん?」
水町の言葉になまえは苦笑する。いくら彼女といえど上半身裸になるわけにはいかない、人として。
普段なら人がたくさんいる巨深自慢の屋上も、流石に授業中は貸し切り状態。まぁ、つまりは二人が授業をさぼったということで。筧怒ってるだろうな、と水町が冗談交じりに言うと、なまえは吹き出した。彼もつられて笑っていたが、突然その声が停止。
「ンハっ」
不意に、座っていた水町が声を上げて立ち上がる。その背はただでさえ馬鹿みたいに高いので、座っている状態から見上げるのはかなり首が疲れる。
「どした、棒が喉にでも刺さった?」
「当たった!」
「はぁ?」
太陽に負けないくらいに眩しい笑顔で水町がなまえの目前に突き出したのは、アイスの棒。よく見ると、その先端には"当たり、もう一本"と書いてあって。ああ、運よく当たり棒を引いたのか、となまえはソーダ味の染み込んだ棒を咥えながら頷いた。
「おめでとーさん」
「なまえ、帰りに売店寄ろうぜ!」
「ん」
「んで、一緒にアイス食おう」
返事の代わりに笑顔を返してやれば、水町はまた嬉しそうに笑ってみせる。風に弄ばれる金色の髪が嫌に眩しく見えて仕方がなかった。
ブルースカイ
青い空に輝くもう一つの太陽
それは、キミの笑顔。
END
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