『美坂家の秘め事』106

「初めまして、陸です」

 蕩けそうな甘い笑顔で自己紹介すると名刺を取り出し栞の手に乗せた。

 何気なく触れた指先にドキッとする。

 他の二人も陸に続いて自己紹介をした。

 茶髪で笑顔の可愛い子は悠斗、黒髪で一見クールで実はシャイな男の子は響。

(絶対この三人ってレベル高いよね…)

 他のテーブルにいるホストもカッコいいとは思っていたけれど栞達の前に現れた三人は別格だった。

 特に陸はズバ抜けていてさっき悠斗が「うちのナンバーワンなんすよ」と紹介した時も驚きはなかった。

「栞ちゃん、こういう所は初めて?」

「え…は、はい…」

 寄り添うように座られて栞は柄にもなく緊張していた。

 おまけに「栞ちゃん」なんて呼ばれ慣れていなくて妙にくすぐったい。

 背筋を伸ばしてまるで面接のような受け答えをすると陸は手を伸ばして栞の髪に触れた。

「もしかして…俺が怖い?」

 少し寂しそうに目を伏せながら髪の先を指で弄んでいる。

(ちょっ…何でこんなにドキドキしてるの)

 自分の胸の鼓動がいつもより早く打っている事に気付き体温もいつもより高いような気がした。

 栞は上手く言葉が出ずに無言のまま首を横に振った。

「じゃあ…まだ緊張してるのかな?」

 陸はクスッと笑いながら栞の頬を突付いた。

 ぷにぷにと触られた箇所からジワァと肌が赤くなっていく。


(は、恥ずかしい…)

「安心して。俺…初めての子には優しいからさ…ね?」

 陸は首を傾けながら栞の顔を覗きこんだ。

 そう言われてもすぐには緊張を解く事が出来ずにいると陸は唇の端をわずかに上げた。

「それとも…栞は意地悪にされる方がいい?」

 ドクンッと胸が音を立てた。

 さっきの甘い声とは違い男っぽい声で囁かれて色っぽい瞳で見つめられた。

 グッと男っぽい妖しい雰囲気の陸の視線に囚われてしまったように視線を外せなくなってしまった。


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