『美坂家の秘め事』104

「栞ー、まだ時間いいんでしょー?」

「どこ行くー? カラオケー?」

 久しぶりに会った高校の時の友達二人は大学生だった。

 気ままなバイト生活の栞に散々ダメ出しをしながらも久しぶりの会話に花を咲かせていた。

 栄のイタリア料理屋でイタリアワインを飲みながらパスタや生ハムを食べた。

 酒豪というほどでもないけれどさすがに飲み足りない感がある栞は久々ということもありもう少し弾けたい気分だった。

「カラオケよりもずっと良い所があるの!」

 そう言う友人に着いていくことにした。

「ね〜ぇ、まだなのー?」

 もう10分近く歩いているけれどまだ目的の場所には着かないらしい。

 大津通、久屋大通を横切り東に向かって歩いていたがもう東急ホテルがすぐそこに見えていた。

(もう…一体どこへ連れて行くつもり?)

 九月に入り秋風も気持ち良くすっかり酔いも醒めていた。

「ここ!ここ!」

 ようやく目的の店に着いたらしく友人が高い声を上げた。

 三階建てのビルの一階。

 銀色のドアの横にある小さな看板がライトで照らし出されていた。

 『CLUB ONE』同じく銀色のプレートにはそう書かれている。

「ここ? 何のお店?」

 店の外観からでは何の店なのか検討もつかない。

 だが来る途中にも似たような感じの店を何軒か通り過ぎていた。

「ホストクラブよ!」

 友人の言葉に耳を疑った。

(ほすとくらぶ〜〜〜??)

 今まで一度も行った事がないし行こうなどと興味すら湧かなかった。

 第一ホストクラブで遊べるほどお金を持っていない。

「ちょ、ちょっとぉ…止めようよ〜。お酒飲むなら居酒屋でいいじゃん。私そんなに持ってないし…」

 今にも店に入ろうとする友人を引き止めた。

「大丈夫だって! 初回は三千円って友達から聞いたから! すっごいイケメン揃いだけどみんな気さくな人ばかりらしいから〜」

 友人もどうやら初めてらしく少し浮き足立っている感じが伝わって来る。

(三千円か…)

 それくらいならいいかと栞は軽い気持ちで『CLUB ONE』のドアを開けた。


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