夏 【10】
新学期が始まった。
何も変わらない毎日。
ただ変わったのは恋をして処女を捨てて失恋をした事。
本当にひと夏のアバンチュールだったのかもしれない。
だいたい大学生なんて私みたいな子供じゃ相手してもらえるわけがないそんな風に考えるようにした。
連絡先も知らない当然住んでる所だって。
あのプールのバイトは夏休みの間だけのバイトだからもう来ないだろうし。
もう二度と会うわけない。
そんな事は十分分かりきっているのに一ヶ月経った今でも一日一回は必ず耕太さんの事を思いだした。
こんなんじゃダメだよね、忘れなくちゃ!
そうだこんな時は映画を見て思いっきり泣いてすっきりさせちゃおう。
レンタルビデオ屋に入ると真っ先に恋愛モノのコーナーへ向った。
思いっきり泣けそうな映画をパッケージを見ながらいくつか手に取った。
カゴの中には王道の恋愛モノの洋画が三、四4本入っている。
少し冷静になってクスッと笑った。
これじゃあなんか失恋しましたって感じがバレバレだよね。
急に恥ずかしくなって今度は新作のコーナーに行ってアクション物や流行の韓流のDVDを手に取ったりした。
「あ、これ…」
ブラブラと見ている時にふと目に留まったDVD。
『ハッピーフォート』
耕太さんが教えてくれた奴だ。
パッケージにはペンギンの絵。
本当だペンギンの映画なんだ。
貸出中にはなってなかったけどそれをカゴの中に入れる事をためらった。
今更こんなの見たって…。
また耕太さんの事を思い出しちゃうだけ。
少しの間持ったまま考えていたけれど棚に戻してレジに向った。
結局カゴの中には恋愛モノの洋画が四本になった。
「1週間のレンタルでよろしいですか?」
「はい」
店員のいつもの質問に上の空で返事をしながら明日は休みだし一晩中DVDを見ながら思いっきり泣こうと心に決めた。
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