夏 【4】
夏休みが終わるとプール開放も当然終わる。
って事は耕太さんとも会えなくなっちゃうんだよね…。
携帯とかも聞いてないし、もちろん告白なんてする勇気もないしね。
このまま終わりかなぁと思っていた夏休みの最終日に奇跡が起こった。
仕事が休みのお姉ちゃんは里桜と二人で遊びに出掛けて私は何もする事がなくてDVDを借りに行った。
適当に映画を二、三本借りた帰り道にワザと遠回りしてプールの横を通った。
最後に耕太さんの笑ってる顔見たいなぁ…。
そう思いながらプールの横をゆっくり歩いて耕太さんの姿を探す。
あれぇ?
今日は居ないのかな?と思ったちょうどその時に目の前に何か飛んで来た。
「うわっ!」
思わず飛んで来た物をよける為に後ろに飛びのいた。
足元にパサッと落ちて来たのは麦わら帽子…見覚えのあるピンクのリボンがついたやつ。
「悪ぃ!それ拾ってー」
すぐ横のフェンスにもたれて私に向かって話しかけているのはまぎれもなく耕太さんだった。
足元の麦わら帽子を拾うとフェンスに近付いた。
プールと道路じゃ高さがあって耕太さんはしゃがみ込むと私と目線を合わせてくれた。
「今日は子守は休み?」
「うん、お姉ちゃんと遊びに行った。」
良かったぁ…顔見れたしお話も出来ちゃった。
「DVD借りてきたの?彼氏と見るんかぁ…それなら今度ハッピーフィートってペンギンの映画借りてみておもしれーよ」
持っていた袋を指差していつものようにニコニコと笑った。
「うん、今度借りてみる!あの…でも…私彼氏は」
そこまで言うとピーッと笛の音がして休憩の為に子供達をプールから上がらせている。
「じゃあね、ばいばい」
耕太さんはプールの方へ体を向けながら私に手を振った。
「えっ…あ、あのっ!」
呼び止めたけれどもう耕太さんは監視員の仕事に戻ってしまった。
これでおしまいかぁ…。
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