大好きなお兄ちゃん 【4】

 お兄ちゃんは私の体を見ないようにバスタオルで包み込んだ。

「はぁ…どうしたんだよ。今日はもう寝ろ」

 私の方を見ないように服を着ている。

「花音は初めてはお兄ちゃんって決めてたんだよ。大好きなお兄ちゃんじゃないと嫌!」

 いくら言っても振り向こうとも返事をしようともしない。

 これは想定外の事態かも。

 まさかここまで頑なに拒否されるなんて…。

 ない頭で必死に考えをめぐらせた。

「もういい。分かった」

 体を拭いて服を着た。

 お兄ちゃんは安心したようにホッと息を吐いた。

 ふんだっ!

 花音の決心は固いんだからね!

「ちょっと出掛けてくる」

「こんな時間にどこへ行くんだ!」

 ようやくこっちを向いたお兄ちゃんが怒鳴った。

「だってお兄ちゃんはバージン貰ってくれないんでしょ?」

 花音、一世一代の大勝負だよ!

 その言葉に口を開きかけたお兄ちゃんだったけど、喋らせないように言葉を続けた。

「喬さんにお願いして来る。やっぱり最初は優しくして欲しいし、よく知ってる人の方が安心でしょ?」

 ニコッと笑ってから歩き出した。

 喬さんはお兄ちゃんの親友で、かなりの女好きで有名なんだよね。

「お、おいっ!待てって」

 慌てて私の腕を掴んできた。

 ふふっ。まずは成功かな?

「花音、そんな大事な事を簡単にあげるとかあげないとか言うんじゃない。そういう事は本当に好きな奴としないとダメだろ?」

 まるで諭すように私に話し掛ける。

「でもお兄ちゃんは私としたくないんでしょ」

「お前は妹なんだから、そんな事出来るわけないだろー」

「なら別に誰とでもいいもん」

 困った顔をして頭を掻いた。

 ふんだ、お兄ちゃんなんかもっと困ればいいんだよ。

「そういう問題じゃないだろ?」

「どうして?いつも可愛がってくれるもん、喬さんなら花音は嬉しいよ?」

「いい加減にしろっ!!」

 パシンッ!

 嘘…お兄ちゃん?

 頭の中が揺れるような衝撃…。

 生まれて初めて叩かれた。
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