女々しい俺の恋 【26】

 愛ちゃんの言葉にホッとして体の力が抜けていく。

 こんな状況でももしかしたら愛ちゃんの側にいられるのかもしれないという期待が生まれてくる。

「そ、それに…」

 モジモジと恥ずかしそうにする愛ちゃんの姿を見て俺の心は期待に膨らんで今にも張り裂けそうになった。

「ナルちゃんが側にいないのなんて考えられないから…」

「それって…?」

 思いっきり期待や希望を込めた目で愛ちゃんの顔を見ると慌てて頭を大きく振った。

「ま、まだ好きとか急には…だ、だって今まではそういう風に見た事なんて一度もなくて…」

 いつも元気いっぱいではっきりと物を言う愛ちゃんがこんな風に俺のせいでいっぱいいっぱいになっているのを見ているとすごく嬉しい気持ちになった。

 それに…急に心も頭もすっきりして余裕が出て来たのを感じる。

「愛ちゃん…」

 俺は初めてくされ縁のナルちゃんじゃなく愛ちゃんの事が好きなナルちゃんとして体を抱きしめた。

 愛ちゃんの体が微かに震えているのを感じて今までで一番優しく抱きしめながら心を決めた。

「好きになってもらえるように頑張っていいかな?」

「ナルちゃんらしいね」

 俺の腕の中で愛ちゃんはクスクス笑いだして慌てて腕を緩めると愛ちゃんは顔を上げてニッコリ笑った。

「俺の事を好きになれ!くらいに言わないと女の子はドキッとしないよ?」

「あ…そ、そうなんだ」

「フフフ…でもそんなナルちゃんだから…」

 愛ちゃんは俺の背中に腕を回して抱きつくような格好になって俺の胸に顔を埋めると小さな小さな声で呟いた。

「すぐに好きになっちゃうかも」

 その言葉に俺はまた情けない事に涙がまた溢れ出してしまって泣きながら愛ちゃんの体を抱きしめた。

 俺の10年間の女々しい恋はようやくスタートラインに立てたのかもしれない。



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