女々しい俺の恋 【20】

「朝早く来ちゃってごめんね、ナルちゃんに話し聞いてもらったら少し楽になった」

 玄関先でそう言うと愛ちゃんは少し元気になった笑顔を俺に向けている。

「全然いいよ。また何かあったらいつでも聞くよ」

 大丈夫、ちゃんと笑えてる。

 もう少しだから…頑張れ俺。

「ナルちゃん…」

「ん?どうした?」

 自分でも分かる程すごい優しい声を出している。

「また…聞いてくれる?」

「もちろんだよ。夜中でもいいから呼び出しなよ」

 その言葉に偽りはない。

 俺は愛ちゃんが必要としてくれるならいつどこにいたって駆けつけると思う。

「ナルちゃんは昔から優しいんだもん、本当にすっごく優しいんだもん」

「愛…ちゃん?」

 いつもと違う様子に心がざわついた。

 本当は相談したかったのはそんな事じゃなくてもっと違う事だったのかもしれない。

「ごめんごめん、じゃあねーまた4人で飲みに行こうね!」

 湿っぽくなりそうだった空気を破るように急に元気な声を出した愛ちゃんが背を向けて歩き出した。

 愛ちゃんらしくない…伊達に10年も友達やってたわけじゃない。

「愛ちゃん!」

 俺は愛ちゃんの後ろ姿に声を掛けると愛ちゃんは数メートル離れた先で立ち止まってくれた。

「本当は何か別の事言いに来たんじゃないの?」

「何それー、ナルちゃん変な事言ってるー」

 愛ちゃんはケラケラと笑って答えるとまた歩き始めた。

 変なのはどっちだよ…。

 そんな風にいつも俺の事心配させて、ほとぼりがさめた頃になるといつもやって来て俺の気持ちかき乱して…。

「愛ちゃん…俺…」

 言いかけて…それ以上言えなかった。

 俺はどこまでも女々しいんだ。
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