『番外編』
2011☆SUMMER3
柔らかそうな二の腕、脇を挟んで柔らかさは胸へと続く、触れれば見た目よりもずっと柔らかい二つの場所。
女の子にとってその柔らかさは憎らしいらしく、実際に麻衣が夏前に鏡の前でジッと自分の二の腕を睨んでいたのを知っている。
麻衣が目の仇にしているその場所は、本人は気付いていないだろうけれど、実はかなり敏感は性感帯でもあって、唇を寄せて柔らかい肌を唇で食めば、甘えた声を出して身体をくねらせる。
(ああ、そうだ)
麻衣の寝顔に見惚れていた陸は、すっかり酔いの醒めた頭で、あの日の自分の行動を思い出していた。
◆ ◆ ◆
あの日は休み明けの月曜日。
前日は二人の休みが重なる日曜日、いつものように一日中二人で過ごして、昼食は久しぶりにホットプレートを出してお好み焼きを焼き、汗をかきながら昼のニュースで梅雨が明けたと知った。
夜は眠るには早すぎる時間からベッドに入り、実際に眠ったのは日付が変わった頃。
抱き合って眠り目覚めた朝、夜の余韻を引き摺る陸は起き上がろうとする麻衣を逃がすまいと抱きしめた。
「陸ーー? 離して?」
「麻衣がおはよーのキスしてくれたらね」
「さっきしたのは何だったの?」
起きてすぐに交わした唇に軽く触れるキスのことを言われたが、陸は素知らぬ顔をして麻衣を抱きしめたまま、ごろりと転がりベッドに背を付けて麻衣の身体を抱き上げる。
「麻衣からして貰ってないじゃん」
子供のような言い分を口すれば、麻衣は聞こえないフリでもしているのか、わざとらしく視線を逸らした。
「早くしないと遅刻しちゃうよ?」
怒らせると分かっているセリフを口にすれば、少し間があってから麻衣の顔がゆっくりと下りて来た。
(朝のスキンシップは一日のモチベーションに関わるからなぁ)
陸は近付いてくる気配に目を閉じて、キスをした後を頭の中でシミュレーションする。
仕事があるから程々で止めておかないと、本気で麻衣を怒らせては元も子もない。
イチャイチャする程度で留めておこうと決めれば、唇に麻衣の吐息が掛かり陸は抱きしめていた手に力を込めたが……。
「イテッ!!」
待機していた唇は空振りで、代わりに鼻先に噛み付かれた。
「麻ー衣ーちゃん!?」
目を開ければ勝ち誇った麻衣と目が合った。
(あーもうっ)
悔しいはずなのに、こんな麻衣も可愛くて愛しくて、陸は抱きしめていた麻衣を勢いを付けてベッドに押し付けた。
「お仕置き」
ベッドに麻衣を押し付け、どうしてやろうかと考えていると、脇で寄せ合わされた柔らかい肌が目に入った。
キャミソールの頼りない肩紐の隣で、寄せ合う白い肌に視線が釘付けになった。
今まで気にしたことなんてなかったのに、なぜかその時は目が離せず、好奇心と悪戯心から唇を寄せた。
「ん……ぅっ」
不意打ちだったのか、声を出した麻衣も驚いた顔を見せた。
◆ ◆ ◆
(そうそう。それがツボに入ったんだ)
結局はその日一日、麻衣のキャミソール姿と脇のぷにぷにした部分が頭から離れなかったのだ。
楽しかった分だけ、麻衣には怒られたのは言うまでもないが、怒る麻衣さえも愛しくて一日中ご機嫌だった結果が、今日のキャミソール攻めとなってしまったらしい。
自業自得とは思うものの、再び目の前の白くて柔らかい肌を目にしてしまえば、それはあまりに些細な問題だった。
「一度味わったら、やみつきになるんだよなー」
起こしたくないと思いつつも、欲求に逆らうことは出来ず、脇で柔らかい肌同士が寄せ合い、境目で盛り上がっている脇のぷにっとした場所に口付けた。
何度も味わったことのある柔らかさのあとに、自分の身体から香るボディソープと同じ香りが鼻先をくすぐった。
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