『姫の王子様』庸ちゃん×お兄ちゃん P4
「我慢なんかしなくても〜」
「母さんっ!」
睦美がけしかけるように庸介を突付いた。
だが間髪入れずに拓朗が目を剥いて睦美を諌めた。
「ハァ…。俺タマ探して来るから」
庸介はグッタリしながら部屋の隅に飛んだ携帯を拾い上げて部屋を出た。
だが部屋を出たところで立ち止まると振り返った。
「そういえば睦美さんもさっき変な事言ってましたよね?」
「あ〜!」
話しかけられた睦美は思い出したようにパンッと手を叩いた。
「お兄ちゃんと庸介くんはいつから…そういう関係だったの?」
「はい?」
「でも二股は良くないわ。三人でよく話し合いなさいね」
「母さん?は、話し合うって…何を?」
二人の話を聞いていた拓朗が口を挟んだ。
部屋の入り口に立つ庸介と視線を合わせて互いに首を傾げた。
「お兄ちゃんも珠子の為と身を引かなくてもいいのよ。自分の気持ちに正直になりなさい。確かに…ちょっとビックリしちゃったけど…そういう恋愛もありよね。ママもなるべく二人の事理解したいと思ってるから」
珠子の乙女脳はどうやら睦美譲りらしい。
ポカンとしている二人を気にする事なく「障害があるほど燃え上がるのよね」とうっとりした表情を浮かべている。
「「ありえないからっ!」」
庸介と拓朗は互いに相手を指差して叫んだ。
声がハモってしまった事に苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちした。
「あら、そうなの?」
「母さん何考えてんだよ!」
「俺はタマ一筋です!」
ぽやんとした顔で答える睦美に二人は噛み付いた。
少し残念そうな顔をした睦美に庸介と拓朗は顔を引き攣らせた。
「じゃあ俺行って来るから」
「おう…また後でな」
すっかり疲れきった庸介が今度こそとばかり携帯で番号を呼び出しながら部屋を後にした。
部屋に残った拓朗もぐったりとベッドにもたれた。
「母さん、今日はあいつらと飯食いに行って来るから」
「そう?じゃあ今日はパパと二人ね〜何にしようかしら〜」
マイペースな睦美に苦笑いを浮かべていると拓朗は手に持っている物を思い出した。
「アーーーッ!!!」
「お兄ちゃん!?」
「俺はピアスなんて許した覚えはねぇっ!!」
拓朗は立ち上がるとすごい勢いで部屋を飛び出した。
「ほ〜んとお兄ちゃんのシスコンには困ったわねぇ」
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