『姫の王子様』
姫の王子様 P11

 本屋の買い物を終えた二人は店を覗きながら歩いた。

「庸ちゃん、今日仕事は?」

「夜からあるよ」

「そっか…」

 自分から切り出したのに返事を聞いて落ち込んだように声が小さくなる。

(今度はいつ会えるのかな…)

 会っている時間が楽しければ楽しいほど離れがたくなる。

「飯食って送ってく時間はあるから」

 安心させるように庸介は頭をポンポンと優しく撫でる。

 それでも寂しそうな顔のままの珠子を見て庸介の顔が切ない表情に変わる。

「そうだ!帽子買いたいんだけどタマが選んでよ」

 何の前触れもなく突然の話に珠子は驚いている。

「あそこにちょうど店あるし」

 少し先の店先に帽子が置いてある店を見つけて珠子の手を引っ張った。

「コレなんかどうだ?」

 庸介は適当に手を伸ばした帽子を頭に乗せた。

「な、なんでイキナリ…」

「いーから、どうだ似合ってるか?」

 帽子を被った庸介がいかにもモデルっぽくポーズを作って見せる。

 あまりにも似合ってない帽子と変に格好つけたポーズに珠子が吹き出した。

「全然似合ってなーい」

「何ーッ!何でも着こなせてこそのモデルだぜ?」

 また違う帽子を手にとって被ると今度こそとばかりに決めのポーズを見せるが珠子は笑いながら首を振った。

「こっちのがいいよ!」

 珠子も帽子を手に取って庸介に差し出す。

 次から次へと帽子を被りポーズを決める様子はさながら帽子のファッションショーだ。

 珠子も色々な帽子を被っては庸介に負けじとポーズを決める。

 楽しそうに笑う珠子を見て庸介はホッとしたように笑っている。

「あ、あの…モデルのヨウさんですよね?」

 帽子を被ってはしゃぐ二人に女性が声を掛けた。

 二人が声のした方へ向くと声を掛けてきた女性の顔が嬉しそうな笑顔に変わった。


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