『姫の王子様』
姫の王子様 P8

「でもその為にはもっと育てよー!背もココもな?」

 頭をポンポンと叩きながら庸介の視線がゆっくり降りていくのを珠子は目で追った。

 庸介の視線が珠子の胸で止まった。

 何を言いたいのか気が付いた珠子が口をパクパクさせている。

「何なら大きくなるように手伝おうか?」

 ニヤニヤ笑う庸介が手を開いて指を動かして見せた。

(信じられないっ!)

 怒った珠子が腕を振り上げたのを軽くひょいとかわした。

 余裕の表情で見下ろしている庸介を珠子は腕を組みながら見上げた。

「へーてっきり庸ちゃんはロリコンだと思ってた」

 そう言うと珠子はプイッと顔を横に向けてスタスタと歩き始めた。

「おまっ…ロ、ロリコンって!」

 いきなりそんな事を言われて動揺している庸介がその場に立ち尽くしている。

 珠子は振り返る事なく早足で歩いた。

(どうせ幼児体系だもん!)

 一番気にしている事を言われてさすがに腹が立った。

(でも去年よりちょっとは大きくなったんだから!)

 それでもまだ膨らみの少ない自分の胸元を見て落ち込む。

(そのうち大きくなるもん)

「ロリコンってお前なぁ…」

 慌てて追いかけてきた庸介が隣に並んだ。

 庸介の方を見向きもせず口を尖らせながら嫌味たっぷりにこう言った。

「中学生に付き合おうって言ったのは誰だっけ?」

「中学卒業してただろーが」

 ポケットに手を入れながら苦笑いを浮かべた。

 身長差のある二人は立ち止まってお互いに顔を見合わせるとプッと吹き出した。

「ったく…ホラ行くぞ」

 庸介が差し出した手をギュッと握るとそれに応えるように握り返してくれる。

(庸ちゃんはずっと庸ちゃんで変わらないでね)

 珠子は心から強く願っていた。


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