『-one-』

温泉旅行! P1


「麻衣、すっごい楽しそ…」

 後ろから突き刺さる視線が痛い。

「俺とは行った事ないのに…」

 陸がソファの上で胡坐をかいて恨めしそうな視線でジーッと見る。


 実は木・金と麻衣の会社が社員旅行で温泉に行く事になりました。

 土日休みで夢の4連休で麻衣は「楽しくないわけがないっ!」と浮かれているわけですが…。


 …ただ拗ねてるのが一人

「俺の事置いてくなんて…シクシク」

(だから会社の旅行だし…)

「陸が時間作ってくれたら、今度一緒に行こ?」

「ほんと?ほんと?」

 陸はソファから飛び降りると麻衣にギューッと抱き着いて頬を両手で挟みこむとチューーッと唇を押し付けた。

 あまりに単純な陸に麻衣はプッと吹き出した。

「時間作れればだけど…?」

「…あぅ」

 店でNo.1で一番忙しいのに簡単に休みが取れるわけがない。


「麻ー衣!抱っこしてあげる!おいで」

 ソファに座った陸が膝の上をポンポンと叩いて腕を広げた。

 麻衣は素直に上に上がると足を跨いで座った。

 最初の頃は照れていたこの体勢も今ではかなり慣れて来た。

 チュッ!

「混浴とか入っちゃだめだかんね!」

「なんで?露天風呂なんだってよ?」

 プゥとあっという間に頬が膨らむ。

「ダメ!それと旅行中は30分に1回メールして!」

「えー?」

 文句を言うと陸は口を尖らせた。

「浮気しないか心配?」

(浮気するつもりなんかないのに…)

 麻衣は陸の顔覗き込むと陸はチラッと麻衣の顔を見てから胸に顔を埋めて呟いた。

「俺が寂しいの」

(はぅっ…何この久々の…)

 麻衣はズキュンと胸を打ち抜かれて一瞬だけ旅行を止めようかと思ってしまった。


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