『-one-』

好きだから空回り P19


 海の見えるレストランで食事だった予定は宅配ピザになった。

 二人でピザを頬張りながら麻衣は陸に聞いた。

「あの服似あってなかった?あーいうのは嫌い?」

 自分では結構自信があっただけに正直似合ってないと言われた事がショックだった。

「…るな」

「え?何?聞こえなかった」

 麻衣はピザを食べるのに夢中で聞いていなかった。

「可愛かったよ!すっごい可愛かった!でも他の男の前であーいう格好は二度とするな」

「なんで?」

「何でって…あんな露出した格好!男に襲われたらどうするの!」

「いっつも陸が襲ってるんじゃん」

「俺はいーの。だって麻衣も襲われて喜んでるし」

 ヘヘッと陸が嬉しそうににやける。

 ムッとした麻衣はピザを取ろうとする陸の手をペチンと叩いた。

「麻衣には全然自覚がないから怖いの!!」

 意味が分からない麻衣は首を傾げた。

「ほらっ、そういうの!麻衣は自分が思ってるよりずっと可愛いの!」

 陸は口を尖らせながらコーラを喉に流し込んでプハッと息を吐く。

 ピザを取りながらさらに熱弁は続く。

「会社でだってあんな風に笑顔で見上げられたらどんな男だって押し倒したくなるの!あいつだって麻衣の事見てにやけたし」

 思い出したのかチッと舌打ちをする。

 だが麻衣は怪訝な顔をして陸を見た。

「陸…会社に来たの?」

「エッ…」

 陸はしまった!という顔で固まった。

 麻衣は反撃のチャンスとばかりにニヤッと笑う。

「会社まで心配で見に来たの〜?」

「ち、違う…たまたま通りかかって」

「ふぅ〜ん。たまたまねぇ?」

 珍しく陸が耳まで真っ赤になっている。

 照れ隠しのなのか大声を張り上げた。

「これからは他の男に話しかけるな!会うな!見つめるな!」

「いやぁ…それは無理でしょ…」

「ま、麻衣はそんなに他の男の気を引きたいのっ?」

 まるで子供だった。

 いつもは大人の男の顔をして麻衣をリードしようとしているのにこんな風に時々見せる子供のような顔が可愛い。

 麻衣は嬉しそうに笑うと陸はまた頬を膨らませた。

end

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