『-one-』
アツアツサマー P1
AM 5:00
二台の携帯のアラームが同時に鳴り響いた。
タオルケットを体に巻きつけるように眠っていた陸と麻衣はそれぞれ手を伸ばした。
軽快な音楽が止むと陸は麻衣の体に体重を掛けないように覆い被さった。
「おはよ」
まだ目も開ききってない陸はおはようのキスを落とした。
同じくまだ眠そうな麻衣もゆっくりと瞼を開けると陸のキスを受け止めた。
二人はもう少しまどろんでいたいのを我慢して体を起こして出掛ける支度を始めた。
休みなのに二人がこんなに早起きしたのには理由があった。
事の起こりは昨夜の一本の電話。
「明日暇な奴連れてバーベキューやるからお前車出せ。麻衣ちゃんも連れて来いよ。朝の6時に店に集合。嫌とは言えないよなぁ?」
オーナーの誠からの半ば脅迫のような電話。
脅迫されるに十分な理由があるだけに断る事も出来なかった。
陸は麻衣が盆休みに入ると同時に二日間の休み取ったがその二日間があまりに楽しくついもう一日休んだのだった。
そしてその三日目の夜に誠から掛かってきたこの電話。
しかも怒っていた麻衣の機嫌を取りこれからエッチへ…と思っていた矢先に鳴った。
せっかく機嫌が直った麻衣は呆れてしまいエッチな雰囲気も台無しで結局明日の準備があるからとお預けを食らった。
洗面所で顔を洗う麻衣の後ろに立った陸は腰を抱いた。
「ねぇ…麻衣」
寝起きで少し掠れた声で名前を呼びながら腰を押し付けた。
尻の窪みに硬い物を感じた麻衣はタオルで顔を拭きながら陸を振り返った。
「時間ないでしょ?」
「昨日させてくれない麻衣がいけないんだよ」
拗ねた口調で文句を言いながら麻衣を後ろから抱きしめる。
二人は鏡越しに視線を合わせると陸は首を伸ばして麻衣の頬にキスをしようとしたが顔にタオルを押し付けられた。
「遅刻してからかわれるのはイ・ヤ!」
そう言いながら麻衣は陸の腕の中からスルリと抜け出して洗面所を出て行った。
「チェッ…」
つまらなそうに口を尖らした。
すべては自分が蒔いた種で文句の言いようもない。
陸はやりきれない気持ちを吐き出すように大きなため息を吐くと勢いよく水を出した。
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