『-one-』
僕の可愛いモンスター P2
ウィークデー PM11:40
「…ご来店お待ちしております」
一本の電話で『CLUB ONE』の店内に緊張が走る。
電話を受けたスタッフは接客中の誠の元へ向かうと後ろから耳打ちをした。
誠は表情を変えずにいくつか指示を出すとスタッフ達が慌しく動き始める。
スタッフの一人が接客中のNo.1ホスト陸の元へ向かい膝を付いて後ろから耳打ちをする。
「モンスターまもなくご来店です」
陸は小さく頷くとまた笑顔で接客に戻る。
そして別のテーブルで同じように伝言を受けた悠斗は客に詫び席を立つ。
『モンスター』
それはこの店に勤める者の間の隠語。
さっき連絡を受けた悠斗がスーツの襟を正しながら入り口にやって来た。
「もう来るって?」
「えぇ…近くまで来ていると言ってましたから」
電話を受けたスタッフと言葉を交わしていると最近入店したばかりの新人ホストが声を掛けた。
「何かあったんですか?」
「モンスター…ってお前はまだ知らないか」
「モンスター?」
「あぁ…説明しなくても来たらすぐに分かるよ」
新人ホストは意味が分からず首を傾げた。
そして待つこと約十分ドアが開くと入り口に並んだスタッフ達の顔が引き締まった。
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