『-one-』

小さな嵐 P27


「ほんとに、ほんとに、大好きだからね?」

 陸が麻衣の腰に手を回して抱き寄せるとコツンと額をくっつけた。

「愛してる。麻衣だけだよ。いつまでも俺が一番だって思ってもらえるように頑張るから」

「分かったから…」

 麻衣が陸の腕の中から逃れようと身体を捩った。

「ほんとに分かってる?俺の奥さんになるのは麻衣しかいないんだよ?麻衣も俺だけだよね?」

「うん、分かったから…」

 麻衣の手が胸を押して離れようとするのを陸はさらに強く抱き寄せて身体を密着させた。

「分かってない。俺がどんだけ麻衣の事を愛してるか…ねぇ、麻衣?」

 陸が目を閉じて顔を傾けて近付いてくる。

「陸ー!!子供が見てるっ!!」

 麻衣の言葉に陸は慌てて顔を上げて体を離した。

 麻衣と陸の足元に男の子が3人座り込んで頬杖をつきながら二人を見上げている。

「チューはしないのか?」

「ばっかまだこれからだろ」

 子供達の言葉に麻衣は真っ赤になって顔を隠している。

「ごめんなー。このお姉ちゃんが恥ずかしがってるから続きは見せてやれねーや」

「陸っ!!」

 麻衣は恥ずかしくなって陸の手を引いて歩き始めた。

「にーちゃん、頑張れよー」

「おー!」

 後ろから聞こえる笑い声に陸が手を振って答えた。

「もぅー、信じられないっ!」

「恥ずかしい?」

「当たり前でしょッ!しかも子供の前でっ」

 横を歩く陸の顔がスッキリしたように楽しそうに笑っているのを見て麻衣はホッとした。

「ね…麻衣?ほんとはアイツに言われて気持ちが揺れたんでしょ?」

「えっ?」

 小さな声で囁かれた言葉に麻衣は思わず足を止めてしまった。

「やっぱりねぇ…」

「り、陸…、違うの。ほら…昔好きだった人にいきなりあんな風に言われたら…だけどね…」

「いーよ。それでも俺が好きって言ってくれたし」

 しどろもどろになる麻衣の言葉を遮って頭をポンポンと叩いた。

 麻衣はホッと胸を撫で下ろした。

「じゃっ…気持ちを揺らしたのとキスのお仕置きをしに帰りますか〜?」

 陸は意気揚々と麻衣の手を引いて歩き始めた。

 今回ばかりは何も言い返せない麻衣は苦笑いを浮かべた。

 初恋の彼がもたらした小さな嵐。

 それでも二人の心は一点の曇りもない愛情で埋め尽くされていた。


end


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