『-one-』

小さな嵐 P1


 プルルル、プルルル、プルッ…

「もしもし?」

「あ、陸ー?今着いたよ」

「無事に着いて良かった」

 3コール目ですぐに繋がった電話からはいつもの優しい声が聞こえて来た。

「子供じゃないんだから」

「あーぁ、麻衣はいつもつれないよなぁ。俺はこんなにも麻衣の事を想ってるのにー」

「はいはい」

 顔を見なくても陸のふくれっ面が目に浮かんだ。

 もう2,3日ずっとこの調子でさすがに麻衣も呆れ返っていた。

 麻衣は金曜日の仕事を早めに上がるとそのまま実家に帰って来ていた。

 久し振りの実家だからのんびりしようと思っていたのに、一緒に行くと言って聞かない陸を何とか説得した。

「俺はたとえ一晩だって麻衣と離れたくないんだよ?」

「…仕事でいつも居ないでしょ?」

「えーっ!そういう事言うと今から車飛ばして行っちゃおうかなぁ」

「陸ー?」

「あー分かってますって。今夜の仕事は飲み過ぎないでちゃんと寝てから明日安全運転で行きます。」

 陸は不貞腐れた声で渋々約束させられた事を一言一句間違える事なく口にした。

「分かってるならいいよ」

「じゃあ、また明日ね。愛してるよ」

「じゃあね。頑張ってね」

 電話を切る前にチュッと音がするのが聞こえて麻衣は微笑みながら電話を切った。

「相変わらず愛されてるわねぇ」

 からかうような声にムッとしながら携帯をテーブルの上に置いた。

 母親の美紀はクスクスと笑いながら久し振りの娘の帰宅を嬉しそうに迎えた。

「あ、そうだ!明日は久し振りに珍しい人が来るのよ?」

「珍しい人?誰?」

「それは明日になってからのお楽しみ!」

 母の楽しそうな態度に妙な胸騒ぎを感じた。 


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