『-one-』
ホストの素顔 P14
携帯を取り出して見なくても分かるが一応相手を確認した。
もちろん美咲からだった。
麻衣はチラッと陸の顔を見た。
「早く出なよ?」
陸が携帯を指差すと麻衣は渋々着信ボタンを押した。
「モシモシ?」
「何その不機嫌な声。昨日はどうしたのよ!突然帰るしメールしたのに返事もしないし!」
「えぇ…と。まぁー色々と…」
「あの後みんな心配してたんだよ?」
「ご、ごめん…」
「という事で今日もお詫びを兼ねて一緒に店に行ってもらいます」
「いや…私は出来れば…あういう所は…」
隣では陸が二人の会話を聞こうと運転席から身を乗り出して耳を澄ましている。
「麻衣?私に恥をかかせたままで済むとでも?」
「………行かせて頂きます」
「宜しい。じゃあ後でね〜」
プツッと切れて携帯を握り締めたままゆっくりと陸を見た。
「どうしてくれるの…」
「いいじゃん!また会えるしー何なら今夜お持ち帰りしちゃおうかな〜」
ゴンッ−
麻衣はゲンコツを陸の頭の上に落とした。
(ったく調子に乗りすぎだってば…)
「痛ッ!今日は無理でも俺とずっと一緒に居たいって思わせるからね!」
頭を押さえている顔が可愛くて思わず吹き出しそうになる。
「早く仕事行ったら?それと…今日はありがとね」
ものすごく驚いた顔をした陸が麻衣を見る。
見られている麻衣も驚いた顔をした。
「どうしたの?そんな顔して…」
「ありがとうって何が?」
「美味しいもの食べさせてくれたし、んー強引だったけど好きって言ってくれて…友達になれたでしょ。帰りの車の中は楽しかったしね」
「麻衣と俺は…友達?」
陸の顔がみるみる引き攣っていく。
(あ…いや…そういうんじゃないんだけど)
勘違いしている陸に慌ててフォローを入れる。
「昨日知り合ったばかりなのに一日で友達だよ。うん…すごい展開の早さだよね」
自分でもよく分からないフォローに呆れた。
これじゃ誤魔化せないよねぇと思っていると陸の目が輝き始めた。
「それじゃあ明日には麻衣は俺の恋人だ!」
「………」
少々周りが見えていないけれど陸は今まで出会った男の人の中で一番真っ直ぐで純粋な気がした。
麻衣は車を見送りながら陸がホストだという事も忘れて高鳴り始めていた。
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