『-one-』
ホストと車 P1
近頃、陸が仕事に精を出している。
週に二、三度は開店前から店に顔を出して後輩達に色々と手ほどきをしているとか。
今回の事で陸なりに色々と考えた末の行動らしい。
それはいい事なんだろうけど私としては少し寂しい…だって…また真っ暗な部屋に帰る事になるから。
「ただいまぁ」
返事が帰って来ないと分かっていてもつい口から出てちゃうんだよね。
電気を点けて歩くと妙にスリッパの音が部屋に響いた。
歩いていくと二人掛けのダイニングテーブルの上に車のパンフレットが積まれているのが目に入った。
【好きなのを選んでね】
陸の字でメモが添えられている。
そう言えば今朝パンフレット貰って来るって言ってたっけ。
「好きなのをって言われてもねぇ」
一体何冊あるんだろうと思うパンフレットの山をパラパラとめくった。
先日私が勝手に車に乗ってガードレールに突進した結果がコレ。
「新しい車に乗り換えるきっかけが出来たー!」
なんて笑ってくれたけど…車って高い買い物だし事故を起こして心配させたしすごく責任を感じる。
「はぁ…やっぱりちゃんとしないとダメだよね」
引き出しを開けて通帳を取り出した。
「うー…」
全部使えば何とか足りるかな?
コツコツと貯めては来たけどそこまで貯まってないあたり何だか自分でも情けないと落ち込んだ。
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