『-one-』

ホストの素顔 P1


(私は一体…)

 麻衣は車の中にいた。

 もっと詳しく言えば麻衣は車の助手席に座っていて運転席には陸が座っている。

「シートベルトしてね」

「あ…はい」

 麻衣は律儀に返事をしてベルト締める。

 いつから自分はこんなに物分りが悪くなったんだろうと思った。

 今自分に起きている事をまったく理解出来ず言われるまま連れて行かれるままそして車に乗せられた。

「あ、あのぉ…まさかあなたが…?」

 何とか頭の中を整理したく声を掛ける。

「何回言えば分かるの?陸って呼んで!」

「あ…り、陸くん」

 勢いに圧倒されて名前を呼ぶ。

(うぁ…その笑顔はちょっとぉ…)

 至近距離からのあの満面笑みを向けられて麻衣は思わず視線を逸らす。

 男の人の笑顔を可愛いと思うのは初めてだった。

「じゃあ行こうか」

 陸の声と同時に車が動き始めた。

「行くってどこへ!ちょっと車止めて下さいっ!」

 麻衣は慌ててハンドルに手を伸ばす。

 その手を陸がギュッと掴んで睨みつけた。

「死にたいの?」

「あ、あの…。私の携帯って本当に…」

 騙されて何かされるのかと思った麻衣はすがるような目で陸に聞いた。

 一瞬間が空いて陸はジーンズのポケットから携帯を取り出した。

「あ…」

 麻衣は自分の携帯に思わず手を伸ばす。

「だぁーめ」

「はい?」

 陸は携帯をまたポケットに戻した。

 麻衣の手は宙に浮いたまま行き場を失った。

「悪用されないようにって俺が拾って一晩預かって、その上朝早くから起こされて10時の待ち合わせに30分以上も遅れてきたのは誰だっけ?」

 麻衣には返す言葉もなかった。

 確かに陸は親切に携帯を拾ってくれてわざわざ持って来てくれている。

 麻衣は鞄の中から白い封筒を取り出した。

(私だって大人だしこれくらい用意してるんだから)

「本当にありがとうございました。これお礼です」

 そう言って白い封筒を差し出した。

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